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2021.07.27FOCUS

コロナ禍で注目が高まる「副業」。「副業」を解禁する企業・受け入れる企業の目的とは?

20代の働き方研究所 研究員 T.H

副業の現在

2018年、政府は働き方改革の一環として「モデル就業規則*」を改訂しました。「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業についての規定を新設しています。副業・兼業は「原則禁止」から、「原則容認」へと変更になりました。

実際に、ユニ・チャームやエイチ・アイ・エスなど一部の大手企業で「副業解禁」が相次いだことから、2018年は「副業元年」とも言われています。
一方、多くの企業では、社員が自社以外で仕事をする場合の「労働時間を管理できないこと」や「情報漏洩の恐れがあること」という負の側面を懸念し、積極的に副業を推奨してこなかった実態もあります。しかしいま、その流れが再び動き出そうとしています。
* 使用者が自社の「就業規則」を作成・変更する際の参考例として厚生労働省が規定例や解説を掲載したもの

「副業」を解禁・受け入れる企業には、どのような狙いがあるのでしょうか?実際に、「副業」を解禁したり、受け入れたりしている企業の事例から見ていきたいと思います。

「働き手視点」から見る、副業が注目される理由

まずは、いま副業が注目されている背景を、働き手側から見ていきたいと思います。

・テレワークの実施により通勤時間が無くなった
→ 削減できた時間を有効活用するために副業を検討

・コロナ禍の業績悪化または労働時間の削減により収入(残業代や賞与)が減った
→ 本業での収入減を補うべく副業を検討

・勤務先の業績低迷などに直面し雇用不安を感じた
→ 会社に依存せずに稼げる手段を持っておきたいと考えるようになり、スキルアップの手段として副業を検討

働き手が「副業」を希望する背景には、「働き方の変化」や「雇用への不安」があるようです。
また20代では、下記のようなニーズもあるようです。

・本業以外のスキルも身に付けたい
未経験から異業種に転職する前に、まずは「副業」で経験を積み、実績を作りたいと考える20代も多いようです。未経験から「副業」をするのは容易なことではないですが、まずは「20代ならではのアイデアを求めている案件」や「スキルマッチングサイトに掲載されている案件」などで、実績やポートフォリオを作ることが近道かもしれません。

・「好きなこと」を仕事にしたい
アクセサリー作りや動画編集、イラスト制作など、人によって様々ですが、「好きなこと」を仕事にしたいと考え、「副業」を検討する人も多いようです。また、SNSやnoteなど、自身の「好きなこと」を発信し、「副業」として育てていきたいと考える人もいるようです。

「企業視点」から見る、副業が注目される理由

・自社の競争力強化につなげたい
→ 副業先の経験を通して得た知見や人脈を活かして、イノベーション創出や新規事業開発の起点となることを期待し、最終的に自社の競争力強化につなげたい

・社員の収入減を補える
→ 従業員の副業容認で、各自が収入を補填できるようにすることで、業績悪化にともなう収入減による優秀な人材の離職防止に活かす目的

「競争力強化」と、「社員の収入確保」が狙いとなるケースが多いようです。「副業」は個人で事業を行うため、経営者目線を養う効果もあると言われています。「副業」で得た経験や知見を、本業に活かすことでより高いパフォーマンスを発揮してもらうことに期待が集まっているようです。

また、社員が自社の給与以外に収入を得る機会を得れば、「収入」を理由に優秀な社員が退職するリスクを軽減できるというメリットもあるのかもしれません。

副業を解禁する企業

-ケース① IHI
大手重工業メーカーIHIは、国内の正社員約8,000人の副業を解禁しました。
主要事業の一つである航空機エンジンなどへの逆風が強まっている中で、副業を通じて外部交流を促し、新事業を生み出せる人材を育てる狙いです。
大手製造業が副業を全面的に解禁するのは珍しく、今後は同業他社の動向にも注目が集まりそうです。

-ケース②みずほFG
みずほフィナンシャルグループ(FG)は社外兼業・副業を認める新人事制度を導入しています。
社外でさまざまな経験を積むことで、社員の成長を後押しする狙いがあるほか、金融界を取り巻く変化を捉えた新たなビジネスモデルを創造する上で、従来の働き方を見直すべく業界に先駆け副業解禁に踏み切ったようです。

-ケース③KDDI
KDDIは国内約1万1千人の正社員を対象に、就業時間中に他の部署でも働ける社内副業ルールを作りました。
他の部署で働ける時間は就業時間の2割まで。次世代通信規格「5G」で異業種との連携が求められるなか、社内で部門を横断して働く環境を整え、新事業の開発につなげる狙いです。

続いて、「副業」で働く人材を受け入れる企業の狙いは何でしょうか?

企業が「副業人材」を受け入れる理由

・社外の知見や柔軟な発想力を活かしたい
→ 自社にない知見やスキルを取り入れることで、他の企業や団体とコラボレーションして技術開発をしたり、オープンイノベーションによる新たな事業拡大などが期待できます。また、社外の優秀な人材の働き方に触発され、意識の向上やスキルアップにつながる可能性もあります。

・専門スキルを持つ優秀な人材を確保したい
→ 副業人材の多くは特定業務に特化している人材であるため、業務の質・効率の改善が期待できます。DXなど、社内に専門人材が不足している場合などに、社外の人材の力を借りたいと考える企業が多いようです。また、「副業人材を受け入れる企業」として認知されることで、優秀な人材を集めやすくなります。

・都市部の優秀な人材に事業をサポートしてもらいたい
→ 都市部で働く人がテレワークを通じて、地方企業の業務を「副業」として担うケースも増えています。なかでも近年加速している、サービスのデジタル化やオンライン対応を担うため、ITやWebマーケティング、サイトの実装などの技術を身に付けた人材が求められるケースが多いようです。

社外の知見や、スキルを活かして競争力を高めたいという狙いがあるようです。

副業人材を受け入れる企業

-ケース① ライオン
ライオンは新規事業の立ち上げに向けて、戦略立案などを担う副業人材を公募。専門的な知識や経験を持った人材を活用し、新規事業の育成を進める狙いです。
ライオンが個人に業務委託する契約で、勤務日数は週1日から。リモートワークも可能で、報酬は経験や勤務日数に応じて個別に決められます。

-ケース② ヤフー
約110人の採用枠に4千人超が殺到したヤフーでは、ネットサービスを企画する「戦略アドバイザー」などを担う副業人材を募集しました。
採用者とは2~3ヵ月という期間で業務委託契約を結びます。原則出社はせず、オンラインで会議などに参加。副業人材は、今後も継続的に募集していく意向としています。

-ケース③ ダイハツ工業
ダイハツ工業は車や電車などを組み合わせスムーズな移動を実現する「MaaS(マース)」の分野で、活躍してもらえる副業人材を募集。週1日程度の勤務でサービスの企画などを行う副業人材の募集を行いました。

まとめ

働き方の変化に伴い、キャリアの築き方も変わっていきます。より柔軟性の高い働き方である「副業」という雇用の形はより広がっていき、「副業人材」が活躍する場は広がっていくことが予想されます。

「副業人材」として活躍するためには「自分自身を知ること」が欠かせません。
自分は何ができるのか。副業先で何をしたいのか。副業でどんなスキルを身に付けたいのか。
常にそうした問題意識を持ちながら、キャリア形成のための機会として活用しようとする姿勢が大切です。
副業を、自己実現につなげるような「パラレルキャリア」にするか、ただの「副収入を得る手段」で終わらせるかは、その姿勢一つで決まるといっても過言ではありません。

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 T.H

1991年5月生まれ。
大学卒業後、就職情報会社にクリエイターとして入社。以降、規模や業種を問わずさまざまな企業の採用サイトやパンフレットなどを制作。モットーは「ユーザー起点」。20代の働き方研究所では、記事執筆のほかコンテンツ制作も担当。休日の過ごし方は読書と古着屋巡り。 
#コンテンツディレクション #社会課題の可視化 #現代アート

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