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2021.08.16FOCUS

話題の「ワーケーション」って何?政府も推進する新たなワークスタイルが秘める可能性と課題に迫る

20代の働き方研究所 研究員 R.W.

ワーケーションとは?

ニューノーマルな働き方として昨今話題の「ワーケーション」。英語のWork(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、主には観光地など、普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得を行う仕組みのことを指します。
ワーケーションにも種類があり、「休暇型」(福利厚生型)と、「業務型」(地域課題解決型、合宿型、サテライトオフィス型、ブレジャー型)に分類されています。

「休暇型」のワーケーションとは、休暇中に働かなければならないということではなく、休暇の合間でも仕事ができる環境を整備して、勤務日・勤務時間を組み入れるという仕組みです。例えば、休暇の合間に勤務日を挟み、リゾート地や観光地でテレワークをするような働き方です。

「業務型」のワーケーションは、会社が行先を決めて出張の様に行う形式で、業務前後や週末にその地域での休暇を楽しみつつ、業務時間は通常と異なる空間で業務を行う仕組みです。いつもと違う場所でのミーティングや業務、地域の人との交流から、新たな刺激が生まれることを狙いとしています。
このように、心身の健康と仕事の生産性を両立できる働き方として注目されているのがワーケーションです。


[出典]観光庁「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー より

ワーケーションが注目される背景

ワーケーションが近年注目を集めるようになったひとつの要因として、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってテレワークが急速に普及し、働く場所の選択肢が増えたことが大きいと考えられています。働く場所が制限されなくなってきたことで、より自分がパフォーマンスを発揮できる環境を自由に選べるようになったということです。
また、働き方改革の一環として有効であることや、低迷している観光事業の新たな需要創出に有効であることから、従業員、企業、受け入れ地域の「三方よし」な働き方として政府もワーケーション普及を推進しています。(※1)

企業・従業員・受け入れ地域それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

ワーケーションに取り組む従業員側のメリット

・長期休暇が取得しやすくなる
日本の有給休暇取得率は世界でも低水準と言われており、長期休暇や有休をまだまだ取りづらい環境です。長期休暇が取得しやすくなることは従業員にとって大きなメリットといえるでしょう。
例えば、休暇の合間に勤務時間を挟み、リゾート地や観光地でテレワークをすることができたら、長期休暇も取得しやすくなりますよね。また、有給休暇が取得しやすくなれば、ハイシーズンを避けてリゾート地や観光地に赴いてワーケーションを行うことができ、旅費や時間の節約にもなるといった利点があります。

・ストレスの軽減やリフレッシュ効果
株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社JTB、日本航空株式会社が共同で実施した「ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験」(※2)によると、ワーケーションは仕事のストレスを37.3%低減させ、実施後も5日間持続することが分かっています。非日常の環境で仕事を行うことで、心身がリフレッシュされ、モチベーションの向上に繋がることから、ワーケーションはライフスタイルにも良い影響をもたらすと考えられています。

ワーケーションを導入する企業側のメリット

・有給休暇取得率の向上
従業員側のメリットとも重なりますが、有給休暇取得率の向上を図れることは企業側にもメリットがあります。ワーケーションを導入することで、仕事との関わりを保ちつつ長期休暇を取得できるため、罪悪感を持たず有休を取りやすくする環境作りに期待できます。働き方改革に注目が集まる今、こうした取り組みに積極的であることは企業イメージ向上・人材流出抑止にも繋がるといえます。

・従業員の生産性向上
前述の「ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験」(※2)から、従業員の仕事のパフォーマンスが20.7%上昇したほか、ワーケーション終了後も5日間は効果が持続することが分かっています。ワーケーションは企業全体の生産性の向上にも効果的であるといえるでしょう。

ワーケーションを受け入れる地域のメリット

・ビジネス人口流入による地域の活性化
関係人口の拡大や企業との関係性の構築は、地域の活性化に非常に有効です。例えばワーケーションの受け入れに積極的な地域のひとつである和歌山県は、UIターンで働くことや、IT企業の誘致にも注力しており、関係人口の流入が地域活性化に繋がると考えています。

・平日の旅行需要創出
ハイシーズンに集中しがちな旅行・観光需要ですが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、ハイシーズンの都道府県間の移動が制限されるなど、観光事業は大打撃を受けました。平日に新たな旅行需要を創出できることは、感染リスク対策にも配慮しながら旅行・観光需要を取り込める新たな取り組みといえます。

ワーケーション導入企業

現在、業界を問わず様々な企業がワーケーション制度を導入しはじめています。(※3)
その中でも代表的なケースを見てみましょう。

―ケース① ユニリーバ・ジャパン 【業務型・課題解決型】
ユニリーバ・ジャパンでは、働く場所や時間を社員が自由に選べる新しい働き方「WAA(ワー)」(Work from Anywhere and Anytime)を導入し、スタートして約5年で実施率はほぼ100%となっています。これを受け、2019年7月にユニリーバ式のワ―ケーション「地域 de WAA」を導入して、8つの自治体と連携しワーケーション推進を図っています(2021年2月現在)

―ケース②日本航空(JAL)【休暇型・福利厚生型】
日本航空では、シフトで管理する現場社員の有給取得率は高いものの、デスクワークなどの間接部門社員の有給休暇取得率がなかなか上がらないことを課題視し、2017年からワーケーション制度を導入しました。社内でも様々な推進施策を実施しており、ワーケーションのトライアルツアーを敢行したり、社内報や社員向け特設Webページを開設しています。
働き方も休み方も自分自身でマネジメントができる「自律型人財」の育成に寄与するとして、積極的にワーケーション推進に取り組んでいます。

ワーケーションの課題

多数のメリットがあるワーケーションですが、導入にはまだまだ課題もあります。

・仕事と休暇の線引きが曖昧になる
テレワーク以上に公私の線引きが曖昧になりやすいと懸念されるワーケーション。個人がしっかりと自己管理能力を養うことが求めれるほか、企業側も労働時間管理の手法や、社員の自発性向上に取り組む必要があります。

・ワーケーション先のネットワーク環境
ワーケーション先のWi-Fi環境や作業環境が必ずしも万全に整っているとは限りません。オフィスや自宅で仕事をするよりもかえって効率を下げることにならないよう、事前の下調べと準備、場合によっては企業からの補助も必要になってきます。

・情報セキュリティ対策
業務に使用する端末や情報を遠方へ持ち出す以上は、セキュリティへの対策も必要不可欠です。
機密情報を含む機器を紛失したり、盗難されないように細心の注意を払う必要があります。また、私用のパソコンやUSBなどからのウイルス感染にも気を付けなければなりません。

まとめ

ワーケーションは、心身のリフレッシュ効果から仕事のパフォーマンス向上にも繋がる有益な取り組みと考えられています。また、働く我々だけでなく、企業にとっても観光業界にとってもさまざまなメリットが期待されており、導入企業も着実に増えています。
しかしながら、従業員の管理とサポートの観点から導入に踏み切れない企業もまだまだ多いのが現状。自由な環境で働くためには、労働環境を可視化する企業側の取り組みが必要であることもさることながら、働く私たちにも更なる自己管理能力が求められるでしょう。
オフィスワーク、テレワークに次ぐ「第三のワークスタイル」確立となるか。今後の動向にも注目が集まります。

【参考サイト】
※1:「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー
※2:ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験
※3:ワーケーション&ブレジャーの導入・推進企業のご紹介

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 R.W.

1994年1月生まれ。
新卒でインターネット広告代理店に入社。企業向けのWeb集客コンサルティングに携わった後、事業会社でのマーケティングに興味を持ち、第二新卒枠で転職。現在はWebサイトの企画・運用・集客・分析を担う。自身の早期離職の経験から、20代で形成されるキャリアや仕事観に興味を持ち、20代の働き方研究所にジョイン。好きなものは、気持ちのいい伏線回収が待っているドラマ・映画。 
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