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2021.08.27FOCUS

VUCAの時代を生き抜くためのキーワード「リカレント教育」とは

20代の働き方研究所 研究員 S.M.

リカレント教育とは

リカレント教育とは、学校教育を終え社会人となった者が、職業上必要な知識・技術の修得を目的とし、生涯にわたってフルタイムの学び直しとフルタイムの就労を交互に繰り返す教育システムのことを言います。ただし日本においては、就労しながらの学び直しも含めてリカレント教育と呼ぶことが一般的で、職業能力の再開発を意味するリスキリングと近い意味で捉えられているようです。

なぜ今リカレント教育が注目されているのか

人々の平均寿命と健康寿命が延び、これまでとは違う人生設計が求められるようになりました。少子高齢化が進む中で、社会システムの維持のために定年の引き上げなどの施策も講じられていますが、社会や経済の仕組みが激しく変化していく先行き不透明なVUCAの時代においては、ずっと同じ会社で特定のスキルに頼って働き続けることは難しいと考えられています。これまで人が担っていた仕事がAIなどに代替される流れも間違いなく加速するでしょう。言わば、個人が持つスキルの賞味期限が短くなり、常に新しいスキルを修得して自らをアップデートし続ける必要性が明らかになってきたのです。
世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート」※によれば、「2025年までに世界で少なくとも8,500万人分の仕事が無くなり、新たに9,700万人分の新しい仕事が生まれる可能性がある」と報告されています。社会人の学び直しのシステム「リカレント教育」が必要不可欠な時代の到来です。

政府も注力するリカレント教育

「人生100年時代」という考え方を提唱したリンダ・グラットン氏は、全員が同じタイミングで教育を受け、働き、引退するという標準的な3ステージ型の人生モデルが、今後は、個人が其々のタイミングで異なるステージを経験するマルチステージ型のモデルへ変化していくと予想しています。そのような社会では、当然ながら社会に出てからも必要に応じたスキルのアップデートが必要になると考えられます。政府も同氏を有識者議員に招いた「人生100年時代構想会議」等の取組みで、リカレント教育などの強化による人づくり革命の必要性について提唱しています。

では、何を学ぶべきか?

何を学ぶべきかの正解はもちろんありませんが、将来的な市場拡大が確実視されているような分野を学ぼうとする方が多いようです。そこで、今注目されている学び直しの分野をまとめました。

・プログラミング
昨年4月に小学校で必修化されたプログラミングですが、社会人の学習者も増えています。IT人材を目指しての学習はもちろんですが、エンジニアとの仕事上のコミュニケーションを円滑にするために学ぶ方も多いようです。学び方としては、アプリやスクールなどの学習サービスを利用する方が多いようです。

・データサイエンス
集積された膨大なデータから、価値の高い情報や知見を抽出していく学問です。情報化が進む現在、かつて無い速度で大量のデータが社会のいたるところに蓄積されています。それらを分析し活用することがもたらす大きな利益の可能性、これがデータサイエンスに注目が集まる背景です。データサイエンティストは専門性が高く、統計学、プログラミングスキル、データベース知識など、横断的な知識が必要です。これらのスキルの一部を持つ社会人が、民間の教育サービスや社内の教育制度を利用し学び直すケースが一般的なようです。

・リベラルアーツ
人文科学、社会科学、自然科学といった幅広い学問領域を横断的に学ぶことで、多様な価値観や物事の本質を見る力を養い、総合的な力を身につけることを一つの目的としています。価値観が多様化・複雑化していく変化の時代に必要な力として、ここ数年で急速に注目を集めている分野です。大学や民間の事業者が提供しているサービスもありますが、独学で学ぶこともできる分野です。

・語学
学び直しとして、以前から人気が高いのが語学です。実際のビジネスシーンで必要性に直面している方も多いでしょう。これまでは英会話スクールに通うというのが一般的でしたが、最近では、安価なオンライン英会話スクールや、英会話勉強用のアプリ、YouTubeのコンテンツ等も充実しています。

教育機関によるリカレント教育

学び直しをする際にまず思い浮かぶのが、大学・大学院や資格学校などの教育機関です。それぞれの教育機関で様々なプログラムが提供されていますが、費用面でのサポートが受けられたり、資格や学位以外の形で学習成果を証明できる制度もあります。

・科目等履修生制度
大学等の学生向けに開設される講座を社会人などにも広く受講可能にし、修めた場合単位として認定される制度。単位を取得することで、将来的に学位を修得する際に活用できます。学び直しのお試しとして履修するのも良いかもしれません。

・履修証明制度
社会人など学生以外を対象に開設された、体系的な知識・技術などの修得のための教育プログラム(履修証明プログラム)を受講することで、履修証明書が発行される制度。単位が認定されるとは限りませんが、学校教育法に基づいた正式な証明で、履歴書に記載しても良いでしょう。ある分野を体系的に学びたい社会人に向けたプログラムなので、「学位を修めるにはハードルが高いが特定の学び直しをしたい」という方におススメです。

・教育訓練給付制度
民間の教育機関を含め、特定の教育について一定の要件を満たした場合に、かかった費用の一部について支給が受けられる制度です。学習の内容によって「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」に分けられ、支給条件や支給額も変わってくるので、費用面のサポートを受けたい方は、詳しく調べてみると良いでしょう。

企業によるリカレント教育

進む技術革新の中で、自社の競争力を維持・向上させるために、社員向けの教育システムを整備する企業は多くあります。具体的な取り組みとしては、社員が学びたい分野を学びたいときに自由に使えるeラーニングを用意したり、大学院に通うなど一定期間学習に専念できる休職制度や復職制度を設ける例などがあります。このような企業主導のリカレント教育環境の整備も今後より進んでいくと考えられます。

まとめ

雇用の流動性が高い諸外国では、社会に出てからも教育機関などで学び直すことは一般的でした。日本においても、これから年功序列・終身雇用といった仕組みが変容していくことを考えれば、社会・個人ともに大きな変革が求められるでしょう。
また、第四次産業革命と言われるIoTやAIなどによるダイナミックな技術革新のうねりの中で、自らの市場価値を維持し高めるための学びは、将来の可能性を拡げるためにも欠かせません。
「教育」というと、他者に教えるという、学ぶ立場としては受動的なものをイメージする方が多いかもしれませんが、本来の教育の姿としては「自ら学ぶ」という形があるべき姿とされています。特に社会人は、必要な学び直しの内容もタイミングも一人ひとり異なるため、より主体的な姿勢が必要です。
前出の「未来の仕事レポート」では、2025年にはデータ分析やコンテンツ創造に関する求人が増えると予想しています。それらを学べる教育機関、民間の資格学校やスクールで学び直し、自らの専門知識を深めてキャリアチェンジを選択する方が増えていくかもしれません。
しかし、未来にどんなスキルのニーズが高まるかは誰にも分かりません。スキルのアップデートを継続できる意思の力こそが、もっとも必要な力と言えるのかもしれません。

[参考]世界経済フォーラム 仕事の未来レポート

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 S.M.

1988年12月生まれ。
大学在学時から教育に興味があり、職種別採用で就職情報会社の大学営業職として入職。以降、キャリアアドバイザーとして多くの学生のキャリア教育・就職支援に携わる。社会人のキャリア形成やリカレント教育への興味から、20代の働き方研究所に参画。自身の研究の傍ら、20代の研究員への助言・サポートをしている。休日の過ごし方はカフェ巡り。
#キャリア教育 #職場環境 #愛・ボードゲーム

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