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2021.09.03RESEARCH

就職・転職市場でも注目集める「SDGs」。より関心を寄せるのは、20代社会人?それとも学生?

 20代の働き方研究所

最近メディアでたびたび目にする「SDGs」。国際社会全体が取り組むべき「持続可能な開発目標」を指し、日本でも企業や地方自治体、教育機関などでSDGsの達成に向けた積極的な取り組みが始まっています。

2015年に国連で採択されたSDGsがなぜ今、注目を集めるようになったのでしょうか。
一つは世界全体が共有する「危機意識の高まり」が挙げられます。貧困層の増加や環境破壊の進行など、さまざまな問題がより深刻になっていることによる危機意識の芽生えが、SDGsの推進につながっていると考えられます。
そしてもう一つの大きな要因として考えられるのが、「SDGsを取り巻くビジネスチャンス」という側面です。国連で採択されたSDGsに取り組むことは、すなわち国際社会へコミットすることを意味します。SDGsが示すビジョンに共鳴する社会貢献意欲のある企業は、ビジネス的観点からも高く評価されるようになっています。
今後は投資家や消費者などを中心に、社会課題の解決に積極的に取り組む企業へ支持が集まり、SDGsに関連するマーケットがいっそう拡大していくことが予想されます。

こうした新たな社会の潮流に対して、20代はどのように感じているのでしょうか。20代の社会人515名が回答したアンケート調査をもとに見てみましょう。

■20代社会人の「SDGs」の認知率は75.5%。2023年卒学生認知率は20代社会人より20ポイント高い

「SDGs」について、20代社会人を対象にした調査では、「言葉も意味も知っている」48.5%、「言葉は知っている」27.0%となっています。一方、2023年卒学生の認知率は、「言葉も意味も知っている」78.4%、「言葉は知っている」17.5%となりました。実に95.9%がSDGsについて「知っている」ことになり、20代社会人の75.5%よりも20.4ポイント高い結果となりました。
20代社会人・2023年卒学生における認知度はともに高い水準にあります。しかし両者を比較してみると、同じ20代の間でも少なからぬ“世代間ギャップ”があることが分かります。これはSDGsが国連サミットで採択された2015年を境に、教科書への掲載や大学の講義で積極的に取り上げられるようになっていることも要因の一つとして考えられます。学生時代からSDGsに触れてきた20代前半はいわゆる「Z世代」、少し上にあたる20代後半は「ミレニアル世代」とも呼ばれ、価値観などの違いも見られるようです。

同じ20代という括りの中でもSDGsについて学んだ機会には差がある。そのことがSDGsの捉え方にどのような違いを生むのでしょうか。次の調査を見てみましょう。

■企業が「SDGs」に取り組んでいることを知ると「志望度が上がる」との回答も

転職活動において企業がSDGsに取り組んでいることを知ると志望度が上がるか、20代社会人を対象に調査したところ、「志望度が上がる」16.7%、「どちらかと言えば志望度が上がる」34.6%と、およそ5割が「志望度が上がる」と回答。
他方、学生を対象にした調査では、「志望度が上がる」34.9%、「どちらかと言えば志望度が上がる」と回答した学生が39.0%となっており、7割以上の学生がSDGsに取り組んでいることを知ると「志望度が上がる」ことが分かりました。認知度と同様、「志望度が上がるか」についても、2023年卒学生の回答が20代社会人の回答を上回る結果となりました。

■17のテーマのうち、企業が取り組んでいるとより好感が持てるテーマの1位は…?

SDGsは、環境、教育、経済成長、ジェンダー、などにまつわる17の目標からなります。これらを先進国・開発途上国を問わず、すべての国が同じ目標の達成に向けて取り組むことを目指しています。
この17の目標のうち、企業が取り組んでいることで好感を持てるテーマは何か、20代社会人に比べSDGsに対し高い関心が見られた2023年卒学生を対象に調査しました。

「SDGs」の17のテーマについて、企業が取り組んでいるとより好感が持てるものは、「ジェンダーの平等」が56.5%で最多。次いで、「持続可能なまちづくりと地域社会」47.6%、「不平等をなくす」43.3%と続きました。
性差による不当な格差や経済面での不平等性、あるいは地域振興などに対して、特に意識的である様子がうかがえます。上位のテーマに共通するのは、おそらく彼/彼女たちにとって「身近」であること。近年、特にSNSなどを通じて、アイデンティティや社会保障などに対する不安の声が上げられています。そうした関心のある問題への当事者意識が芽生えやすい状況も、調査結果に反映されているのではないかと思われます。
 

<調査概要>
・調査対象:[20代専門]転職サイト「Re就活」へのサイト来訪者
・調査方法:「Re就活」にアクセスしたサイト来訪者に、アンケートのポップアップを表示
・調査期間:2021年6月2日~2021年6月15日
・有効回答数:515名

・調査対象:「あさがくナビ2023(ダイレクトリクルーティングサイト会員数No.1)」へのサイト来訪者
・調査方法:Web上でのアンケート
・調査期間:2021年6月25日~2021年7月29日
・有効回答数:936名

■研究員の視点

今回の調査でSDGsに対して高い関心を見せた20代は「ミレニアル世代」「Z世代」と、2つの世代に分けることができます。特にZ世代は、物心がついたときからスマホやSNSに触れている「デジタルネイティブ」、そして早期からSDGsへの理解を深め、社会課題に対する感度の高い「SDGsネイティブ」でもあるとされています。上の世代以上に社会課題に対する問題意識が高く、そのことが学生時代から特定のテーマへ強い関心を寄せていることにつながっているのかもしれません。
とはいえ、どちらの世代もSDGsへ高い関心を抱き、多くの人がキャリアを左右する要素として捉えていることには違いありません。就職先を選ぶ基準も、待遇や仕事内容といった既存の要素だけではなく、「社会課題に真摯に向き合いながらビジネスに取り組んでいるかどうか」で決める。そうした時代に突入しつつあるといえます。「社会課題に対する姿勢や取り組み」は、企業の将来性を推しはかる指標として、今後さらに重視されていくのかもしれません。

この記事を書いた人

 20代の働き方研究所

20代中心の研究員で構成された研究機関。20代が主体的に「キャリア」や「働き方」を選択できるように、キャリアや仕事観の形成に関する調査・研究・情報発信を行っています。

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