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2021.09.10FOCUS

副業を始める前に。知っておきたい「労働時間」について総ざらい!

20代の働き方研究所 研究員 T.H

副業を始める前の確認事項

「副業元年」ともいわれた2018年を起点として、副業の機運が高まっています。副業を解禁する企業、チャレンジする人々が増えてきている中、関心を持たれている方もいらっしゃると思います。
しかしいざ副業を始めようと思ったとき、まず頭をよぎるのは「本当に本業と両立できるだろうか」という不安ではないでしょうか。
そこで今回は、本業と副業を無理なく行うようにするための「労働時間の管理」にまつわる情報を解説します。

適切な労働時間で働くために

企業に勤めている場合、適切な労働時間や時間に見合った賃金は労働基準法で定められています。そこでは1週間40時間、1日8時間以内が「法定労働時間」として定められています。そして、労働基準法で定められた法定労働時間の範囲内で、各企業は自社における「所定労働時間」を定めているのです。

では、こうした取り決めの中で副業の労働時間はどのように扱われるのでしょうか。
副業先で雇用関係を結んでいる場合、本業の勤め先と同様、副業先での所定労働時間が設定されているはずです。ここで注意すべきなのは、本業と副業、それぞれで定められた所定労働時間は「通算」して考える必要がある、ということです。本業+副業を通算した労働時間が、法定労働時間に収まるかどうかが、労働時間の“適正”を測る一つの基準となります。

例として、本業の一日の所定労働時間が8時間、副業での所定労働時間が2時間であるケースを考えてみます。両者を足し合わせると1日の所定労働時間が10時間となり、法定労働時間である8時間を超過してしまいます。そのため超過した2時間が「法定時間外労働」となります。今度は、本業の一日の所定労働時間が6時間、副業での所定労働時間が2時間とされているケースを考えてみましょう。この場合、両者を合わせた1日の所定労働時間は8時間となり、法定労働時間である8時間もクリアしているため、労働時間としてはいわば“適正”であるといえます。
すなわち副業のみを取り上げ、労働時間として適正かどうかを判断することはできず、あくまで本業+副業のセットで労働時間を考える必要があるということになります。

36(サブロク)協定とは?

しかし、そもそも本業でフルタイム勤務している方は、多くの場合、副業先での勤務=法定時間外労働にあたります。だからといって、もちろん法定時間外労働=違法というわけではありません。
重要なのは、法定時間外労働に設けられている上限が守られているかどうかです。その上限を定めているのが、いわゆる「36(サブロク)協定」と呼ばれる「時間外及び休日の労働に関する協定」です。労働基準法第36条に定められていることからその名のついた「36(サブロク)協定」は、法定時間外労働、すなわち法律上の「残業」に関わる取り決めです。この協定に基づいて労使協定を締結し、その内容を企業が所轄の労働基準監督署長に届け出た場合に限って、通常月45時間、年間360時間を上限に時間外労働として働くことができます。
また、この法定時間外労働には、労働基準法にしたがって通常25%の割増賃金の支払いが定められています。しかし、副業に精を出しすぎることで本業がおろそかになったり、本業+副業による長時間労働が健康面を損ねることになってしまっては元も子もありません。副業を行う際は本業のみの場合以上に、自身での時間管理が求められるといえます。

副業先の労働時間は本業の勤務先へ事前申告すべき?

厚生労働省は2020年9月より、企業に対し、副業を行う従業員の労働時間を事前申告させる新ルールを制定しました。これまで副業解禁に慎重だった企業側の問題——従業員の労働時間の把握が難しく、長時間労働を助長する恐れがあったこと——を解消するための対策とされています。
新ルールの内容は、具体的には以下の通りです。
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・時間外労働の上限規制(月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内)の範囲で、労働者は事前に本業と副業の勤務先に時間外労働の上限を申告。
・例えば、労働者が時間外労働を1カ月あたり60時間と設定した場合、本業で40時間、副業で20時間などと決めて、それぞれの勤務先に申告。
・両社は自社に対して申告された上限を守れば、相手先の残業時間が上限を超えても責任を問われない。
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こうした働きかけが、従業員側にとってはより徹底した自己管理を行う契機となり、企業側にとっては従業員の労働時間が把握でき、より積極的な副業支援につながることも期待されます。
一方、新ルールの問題点としては、従業員側の自己申告制であることが挙げられます。副業先で長時間働いているにもかかわらず、企業側には過少に申告することで、上限規制に抵触することなく収入を増やそうとする問題も想定されます。いずれにせよ形だけの制度にならないよう、企業側と従業員側がともにメリットを理解した上で、正しく運用するように努めていくことが求められます。

まとめ

副業には、新たな収入源としての側面だけでなく、業務を通じて新たな知識や経験を積め、さらに本業では出会えなかった人脈を得られるなど、実に多くのメリットがあります。将来、新たな働き方に踏み出すための絶好の機会になるともいえるでしょう。
一方で、初めて副業を行う場合は特に、本業との適切なバランスが分からず、つい頑張りすぎてしまうもの。20代は体力的に多少の無理にも応えてしまえるため、気づかないうちに心身の健康を損なう可能性もあり、注意が必要です。
もちろん、副業をするにあたっては「自分が携わりたいと思える業務であるか」がなにより大切です。しかし同時に、本業と両立できそうか、働くのであればどのような比重で働けばよいかなど、現実的な視点も大事にしながら副業先を選ぶようにしたいですね。
 

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 T.H

1991年5月生まれ。
大学卒業後、就職情報会社にクリエイターとして入社。以降、規模や業種を問わずさまざまな企業の採用サイトやパンフレットなどを制作。モットーは「ユーザー起点」。20代の働き方研究所では、記事執筆のほかコンテンツ制作も担当。休日の過ごし方は読書と古着屋巡り。 
#コンテンツディレクション #社会課題の可視化 #現代アート

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