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2021.10.22FOCUS

上司だけでなく、同僚や部下からも評価を受ける「360度評価」。注目を集める理由と、働き手にとっての活かし方とは?

20代の働き方研究所 研究員 E.S.

マネージャーや部長、課長など管理職が、部下の評価をする。これまで、上司が部下を評価するという、一方向的な評価制度が一般的でした。しかし近年、上司・同僚・部下など、評価対象者にとって立場の異なる人が多面的に評価をする「360度評価(英語:360-Degree Feedback)」という評価制度が注目を集めています。今回は、「360度評価」が注目を集める背景や、働き手がこの考え方をどのようにキャリアに活かしていくべきかを探っていきます。

「360度評価」とは

360度評価とは、上司・同僚・部下など、評価対象者にとって立場の異なる人が多面的に評価をする手法のことで、「360度フィードバック」「多面評価」とも呼ばれています。 「評価」という言葉が付いてはいますが、元々は能力開発の手法としてアメリカで誕生したもので、必ずしも人事評価のための手法ではなく、処遇などとは結び付けずに育成の手法として用いられることも多くあります。
 

「360度評価」が注目される理由

「働き方改革」により、残業時間の削減や、自宅やサテライトオフィスなどでのテレワークが推奨されるようになりました。その結果、直属の上司が常に仕事内容や勤務態度を把握することが難しくなり、従来のように上司のみが被評価者に対して行う一方的な評価には限界があると指摘されるようになってきました。コロナ禍でテレワークが普及・定着するなかで、「従来のような評価は難しい」という課題がより顕在化しています。20代の働き方研究所の姉妹サービスである「Re就活」で実施したアンケートでは、「テレワークで『どう評価されているか分からない』など、評価に関して課題を感じている」と回答した20代が、約4割に達しました。



特にテレワークの環境では、普段あまり関わることの少ない上司から評価を受ける場合もあります。良い評価であれば、あまり気にならないかもしれません。しかし悪い評価や改善点を指摘された場合、その評価に対して納得感を得にくいこともあると思います。「360度評価」では、普段から関わりの深い同僚や部下といった、様々な人から評価を受けることができるので、より現実に即した評価を受けることができ、評価への納得感の高さから、自身の仕事や業務の進め方の改善にも役立てやすいと言われています。

近年は、キャリアの「自律性」が重視され、自らキャリアを選択したり、スキルを磨き、能力を高めていくことが求められています。様々な立場の人から評価を受けることは、自分自身の強みや改善点に気づく機会にもなると考えられています。「360度評価」を導入されるアイリスオーヤマの人事部マネージャー 佐藤 祥平さんは、「『360度評価』は、多面的な評価をされることによって、自分の評価と、上司や部下などの他者の評価との間に差がどのくらいあるのかを知り、自己分析に役立てることが狙い」とお話されていました。自分は高く評価したけれど、他者は低く評価したという項目があった場合、なぜそのような差が生まれているのか、不足していると思われている点をどのように埋めていくのか、面談で上司と話し合い、社員の能力開発に活かされているようです。

自己評価が他者からの評価と異なる場合、他者からの評価を受けることで、自身を客観視することが可能です。また、自身では気づいていない点や、それほど意識していない点(無意識のうちにできてしまっている点)で評価されていることを知れたら、自身の能力として認識することができるかも知れません。
 

「360度評価」の活かし方

「360度評価」を自身のキャリアに活かしていくためには、企業が導入している目的を知るのが近道かもしれません。

●評価の客観性を高める
●直属の上司が発見できなかった点も評価する
●多面的に自身の現状を知る
●コンピテンシー(行動特性)の浸透
●社員間の人間関係の把握

多くの企業では、このような狙いで「360度評価」を活用しているようです。自己評価と他者評価の違い、関係者による評価の違いから自己の強みや弱みを多面的に把握し、自己理解を深めたり、改善すべき行動を自覚することで、目指す姿に近づくための意識を持つことが重要です。

また、「360度評価」は、働き手が「気付き」を得るためのフィードバックの手法としても注目されています。1人の上司による評価よりも、様々な立場の複数の人による評価の方が、本人も真摯に受け止めやすいと考えられています。管理職層は、「部下からどのように見られているのか」という気付きをマネジメントに活かすことを、若手社員は、「周囲からどのように見られているのか」という気付きをチームプレーに活かすことが期待されています。

20代でも、新入社員の面倒を見たり、チームを任されたり、何かのリーダーや推進役を担ったりと、育成やマネジメントの機会があるかもしれません。上司だけでなく、同僚や後輩からどのように見られているかを知ることは、マネジメント能力を磨き、自身の可能性を拡げることに繋がっていくと言えます。

アイリスオーヤマの佐藤さんも、「自己分析は、社員一人で行ってもうまくいかないこともあります。そこで、上司面談の際には、なぜ他者からはそのような評価を受けることになったのか、対象の社員が納得のいくまでしっかり話し込むようにしています」とお話されていました。「360度評価」が制度として導入されているかどうかは企業によって様々ですが、自身がどのような評価を受けているのか、どのような点を期待されているのか、コミュニケーションを図ることはどの職場でもできるはずです。仕事の区切りがついたタイミングや、年末・期末などの節目に、一緒に仕事をする人とフィードバックをしあうことも、キャリアを一歩前に進めるきっかけになるかも知れません。
 

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 E.S.

1992年9月生まれ。

新卒で入社した企業で法人営業職を2年経験後、内勤セクションに異動し、インサイドセールスの仕組み作りを実施。インサイドセールスから仕事の幅を広げ、現在はマーケティング・商品企画・販売促進・広報を担う。学生時代は教育系NPOでキャリア教育に携わっており、キャリア形成への興味から、20代の働き方研究所に、副業でジョイン。広報・マーケティングのほか、取材や各種調査を担当。
#ビジネスプロデュース #1→10 ♯社内副業 ♯スヌーピー好き

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