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2023.04.26FOCUS

【渦中の人に聞く】米国の自動車ディーラーから教育業界へ。大きなキャリア転換の中で見つけた「人生をドライビング」する方法とは

20代の働き方研究所 研究員 T.I.

自分らしい働き方や生き方を大切にする価値観が広がり、コロナの影響から少しずつ日常に戻りつつある昨今。今回お話を伺ったのは、株式会社トモノカイにて、中学高校の放課後支援部門で学習コーディネーターとしてご活躍されている笠尾 穂波(カサオ ホナミ)さん。学生時代には3度の留学を経験され、大学卒業後にはアメリカ・ボストンの自動車ディーラーで勤務。帰国後は大きくキャリアを転換し、長年の希望であった教育分野で働かれています。笠尾さんの行動力の裏にはどんな考え方や思いがあるのか紐解いていくことで、自身のキャリアを切り拓き自分らしく生きていくためのヒントを探ります。

株式会社トモノカイ
2000年4月設立。学校向けの教育支援事業では、大学生を放課後の中高に派遣し、生徒の学習を支援している。また、留学生を中高に派遣し、英語のコミュニケーション力を醸成するグローバル教育共創事業も展開。その他、家庭教師紹介事業や塾講師求人広告事業など、「未来へ“トモ”に」の思いの下、教育分野で幅広い事業を手掛けている。

「自分の人生は自分でドライビングできる」と学んだ3度の留学

―3カ国への留学、アメリカで自動車ディーラー、そして現在は日本の教育分野でご活躍されるなど、積極的に色々なことに取り組まれているのが印象的です。子どもの頃から積極的な性格だったのでしょうか

子どもの頃からとにかく好奇心旺盛で、外遊びが大好きでした。常に友人を引き連れて走り回って、転んでケガをしたら泣いて、でもまた走って……(笑)。にぎやかな子どもだったと思います。

中学受験を控えた小学6年生の頃のことです。時事問題の対策として、朝のニュース番組をよく観ていたのですが、テレビの中でバリバリ働き、人に元気を届けている女性アナウンサーに憧れを抱きました。「アナウンサーになりたい!」と思ったのではなく、自分の人生を自分の力で切り拓いているという女性像に憧れたのです。

「伝えないと伝わらない」という思いから、感謝や憧れを綴った手紙を女性アナウンサーに送りました。まさかお返事をいただけるとは思っていなかったのですが、「そのままの行動力でチャレンジし続けていれば大丈夫」と温かい言葉でお返事をいただいて、今でもその手紙を思い出しては、前向きになるきっかけをもらっています。

―高校2年生の時に初めて留学を経験されていますが、留学をしようと思ったきっかけは何だったのでしょう

もともと海外や、自分が住んだことのない地方にワクワク感を覚える子どもでした。私の知っている世界とは文化が異なることが面白く、小学生の頃は図書館などで世界の洋服や食生活について書いてある本を好んで読んでいましたね。

中学に入学してからは、英語をツールにもっと世界が広がるかも!と思うようになりました。実際に海外に行って、もっと海外の文化を知るという夢が実現可能となったんです。

また、当時の友人が、夏休みにオーストラリアへ留学し、帰ってきた頃には見違えるほどコミュニケーション力が向上していて、振舞もエネルギッシュになっていました。そんな姿に刺激を受け、私も留学にチャレンジすれば、なにか変わるかもしれないという期待があって、留学を決めました。

留学先は、初めての海外ということもあって、治安がよく、日本人やアジア系の人も多く滞在しているニュージーランドを選択しました。確かに安全な環境でしたが、一度海外の生活を知ったことでもっと冒険心の赴くままに世界へ出たいという思いが芽生え、高校卒業後には日本人やアジア系の人が少ないマルタへ留学。飛行機の乗り換えがうまくいかなかったり、現地で言葉や文化の壁を感じてホームシックになりましたが、自分が何のためにここに来たのかを思い返すことで自分を奮い立たせました。

留学初日から文化の違いに驚く日々でしたが、世界各国から集まった人々や、現地で学び続ける50代、60代の日本人の姿も刺激になりました。「世界ってこんなにも広いんだ」という当時の私が感じた感動を、自分よりも若い子にも伝えたいと思ったことが、「教育」という分野を志すきっかけとなったのです。

―そして大学在学中には、アメリカへの長期留学をされたんですよね

ニュージーランドとマルタは2週間の短期留学だったので、アメリカが初めての長期留学となりました。両親に大きな負担をかけるわけにはいかず、自らの手で資金を調達する必要がありました。いろんな奨学金制度を調べ、最終的には文部科学省の留学支援事業「トビタテ!留学JAPAN」の選考を突破し、資金を確保することができました。この経験で、「とにかく行動すれば何か見つかる」という自分の根底となる価値観が形作られたように感じています。

現地では教育について学びながら、保育園や学校に自分で問い合わせて、ボランティアやフィールドワークの機会をつくってもらい自分に合った仕事を探しました。もちろん、全てのものごとがうまく進むというわけではありません。言語の壁、文化の壁に阻まれ、自分の感情をうまく表現できず、立ち止まってしまうこともありました。しかし、自分が落ち込んだままにならないよう、どうすれば前向きになれるのか、どうすれば自分で自分の機嫌を取れるかなど、自分のコントロール術を学ぶきっかけにもなりました。

こうした経験で、「自分の人生は自分でドライビングできる」と学べたことが一番の収穫であったと感じています。日本でおくる日常生活は、いろんなルーティンや当たり前に縛られてしまいがちです。一方で外国に行くと、人種も立場も違えば、常識も違いますし、いろんな生き方をしている人がいます。現地で生活している日本人の生き方も刺激になり、誰でも自分の道は自分で切り開いていくことができるということを実感できた経験でした。

米国の自動車ディーラーから教育業界へのキャリア転換

―大学卒業後にはアメリカの自動車ディーラーで働かれていたとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか

はじめはディーラーで働くとは思っていませんでしたが、留学で知り合った人達が現地での就職の道を選んでいたことに影響を受け、自分も志すようになりました。日本に戻って普通に就職してしまうと、ふたたび海外へ行くには多大な労力がかかります。「挑戦するならいましかない!」という思いに駆られました。

教育分野のカリキュラムを履修しており、いつか自分は教育に携わるだろうと確信していました。ですが、すぐに教育業界でのキャリアを築くのではなく考えをフラットにして他の業界にもチャレンジしてみようと、まったく異なる業界にも目を向けて就職活動を行いました。そして、ボストンで支店を立ち上げるというゼロから1を経験できること、日本の中古車の魅力を伝えることができる仕事であることに興味を持ち、ディーラーを選択しました。

オフィスだけは用意してもらったものの、支店の立ち上げには解決しなければいけない課題が毎日のように迫ってきます。例えば看板ひとつ出すにしても、大家さんに確認を取ったり、景観の関係から役所に許可を得なければなりません。そして何より、働きだしてすぐにコロナが流行したことも大きく影響しました。混乱した情勢からメールや電話をしても返事が一向に返ってこなくなってしまったのです。業務が進む兆しが見えず、ネガティブになってしまうこともありました。

一方で、人間の温かさはどこにいても変わらないなと思えた経験もしました。車ひとつとっても、買い取って売るというプロセスの中でガソリンスタンドや自動車整備業者など、いろんな方と関わりながら一つの車を整備します。ビジネスではありながらも、協力し合いながら一つの車をよくしていこうという思いを共有して業務にあたるので、出自や文化の違いはありつつも、人と人の確かな繋がりを感じながら働くことができる環境でした。



―そして、ガラッと職種を変えてトモノカイに入社されたんですよね。入社の決め手はどんな点だったのでしょうか

教育業界に携わりたいと考え続けていましたので、日本に戻って就職活動を行う際には、教育業界であることをマスト条件として探しました。そんな中、トモノカイに入社を決めたのには3つの理由があります。

一つは、中高生が自身の可能性を拡げていくことに貢献したいと考えたからです。私自身、留学を経て視野が広がり、自分で道を切り開いていく面白さを知りましたが、きっかけとなったのは周囲の存在でした。なので、今度は中高生が一歩踏み出すきっかけを届ける側になりたいという思いがあったのです。また、私は大学付属の高校に通っていたので、進路選択の幅が狭く、なんとなく進路を選んでしまったという後悔があります。大学に入ってからたくさんの情報に触れる中で、進路選択についてももっと大胆な決断をしていれば、違う今があったのではないかという思いがあり、この思いを中高生に還元したかったのです。こうした気持ちを実現できる事業、部署がトモノカイにはありました。

二つ目に、トモノカイがベンチャー企業であり、これから新規事業を模索していく環境であったことです。現在は中高生の支援をメインで取り組んでいますが、自分がこれまで様々な経験をした中で、幼児や小学生、そして保護者を支援していく活動にも興味を持つようになりました。子どもたちが個性を発揮し、そしてその個性を保護者が温かく見守る世の中を作ることができる事業がトモノカイから生まれるのではないか、という可能性を感じたのです。

三つ目に、面接などを通してトモノカイのメンバーと関わる中で、このメンバーと一緒に働きたいと思えたことも大きな決め手でした。私は人と会話するのが好きで、考え方や価値観も周りの人から影響を受けてきました。トモノカイの人たちは、まっすぐ純粋にいいものを作りたいと思っている人が多く、面接からもそれを感じることができたのです。この環境に飛び込めば、自分も自分らしく成果を上げていける環境なんだなと思わせてくれる人たちでした。

念願の教育に携わっているということもあり、中高生のころから感じていた教育に対する問題意識を一つずつ解決しているという実感があります。そしてやはり、先生や生徒、派遣している大学生、そして保護者の方々と関わりながら働いているので、人との関わりの面白さを日々感じながら業務にあたっています。

特にイベントなどを行うと、私たちや派遣した大学生と話した生徒の瞳が輝く瞬間を目にすることがあります。子どもたちにとってその瞬間が何かのきっかけになるかもしれませんし、人生における大事な価値観が芽生えた瞬間かもしれません。自分がそんな瞬間を創り出すことももちろん嬉しいですが、自分がマネジメントしている大学生がそういった瞬間を創り出していると、この仕事をやっていてよかったと心から思えます。

自分の経験をさらに次の世代へ還元していくために

―大きなキャリア転換を経験されて、得た知見などはありますか

まずキャリアの転換に伴って、自動車という有形商材から教育サービスという無形商材を取り扱うようになったというのは一番の変化でした。有形商材であればモノを実際に見てもらい、気に入ってもらえれば購入いただけますが、無形商材は実績や効果など、あらゆる面から魅力を伝える必要があります。また、教育は特に結果がすぐに見えるものではないので、先生や生徒の満足度や、生徒にとって気づきがあったかなどからサービスの魅力を伝えます。効果検証がしにくい分、生徒の成長に寄り添い続ける面白さや可能性がトモノカイの業務の魅力でもありますね。

一方で学校にゼロから新しい教育プログラムを導入していくという「立ち上げ」という点では、トモノカイの業務はディーラーの経験と共通しています。アメリカで経験した店舗の立ち上げというゼロから1を作り出す業務では、想定していなかった問題が次々と発生しました。そんな時、あきらめるのではなく、他のやり方を模索する、人に相談することで、みんなで一つのものを作り出していたという経験とマインドはトモノカイでの活動にも活きています。

またキャリアを転換しても、「自分がなにをしたいのか」という目的を持ち続けているという点は一貫しています。進路選択、留学、就職活動、そして日々の業務の中で、迷ったり、躓くことは誰しもあるはずです。そういった時、自分の目的に立ち返ることで、今自分がすべきことは何なのか、したいことは何なのかが見えてきます。「こういう文化の中で働きたい」「こんな人たちと働きたい」という目的が、私を前職やトモノカイに導いてくれました。これからも目的を持って自分の居場所を探していきたいですし、生徒や大学生にも「目的をしっかり持って、自分の人生をドライビングしていく」ことの大切さを伝えていきたいと考えています。

―読者である20代の皆さんが、笠尾さんのように自分の思い描くキャリアを実現するためにはどうすればいいでしょうか

一つは、自分と向き合い続けることです。私は毎日感情の振り返りをスプレッドシートに書き出すことを習慣にしています。ほんの些細なことでも、よかったことや違和感を覚えたことを書き出すことで気持ちが前向きになり、抱えた感情の原因を整理することができるので、次のアクションはどう起こしていけばいいのか、どういった事態を避ければいいのかが明確に見えてきます。

あとは、ずっと同じ場所にいると、環境に慣れて気づけばコンフォートゾーンにいる可能性があります。居心地の良いストレスフリーな環境に留まっていては、自分の可能性を狭めてしまいます。そうならないためにも、自分自身で可能性を切り開いていけるように、いろんなコミュニティにアクセスし続けることが大切です。たくさん人の話を聞き、また自分の話を誰かに聞いてもらうことで、自分の可能性を試したくなるはずです。



―本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に、今後のビジョンをお聞かせください

まず私自身のことです。今後、結婚や出産など、人生で決断しなければならないことが多くあります。ライフステージに合わせて、ライフスタイルも変えていかなければなりません。トモノカイで自分にとって最適な働き方を追求していきたいですし、トモノカイはまだ若い会社なので子育てしながら働いている方は多くありません。自分が先陣を切って子育て世代が働きやすい環境を作っていきたいと考えています。

仕事面としては、生徒が「応援者」と出会う機会をどんどん作っていきたいというビジョンがあります。私自身、アナウンサーの方からいただいたお手紙に励まされたり、両親や友人以外の応援者に影響を受けて今日まで自分のキャリアを走り続けることができました。いまトモノカイで支援している中高生たちも、私たちや大学生と出会うことで「応援してくれているから新しいことやってみよう!」と思ってもらえる機会を一つでも多く創出していくことが目標です。

また、今は中高生を対象とした支援を行っていますが、元々興味があった幼児教育や子育て世代への支援にも分野を広げていきたいと考えています。小さな頃から個性を発揮して自分らしく生きていける、そして保護者もそれを受け止めることができるサービスを提供できれば、とビジョンを練るところから始めています。

よく聞く言葉ですが、「今日が一番若い日」っていい言葉ですよね。何かやりたいことが芽生えたのであれば、とにかくまず行動に移す、そしていろんな人と関わってみる。壁打ちをして、もらった意見を参考に自分の生き方、働き方について考えてみることで、本当に自分がやりたいことは何なのか見えてくるはずです。


株式会社トモノカイ 笠尾 穂波さん
学生時代に3カ国への留学をご経験後、米国の自動車ディーラーとして勤務。帰国後はキャリアを転換し、トモノカイで大学生を放課後の中高に派遣して生徒の学習を支援するコーディネーターとして働く。留学と米国自動車ディーラーの経験から得た知見を活かし、「応援者」として生徒が自分自身の力で道を切り開いていけるように導いている。

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 T.I.

1995年5月生まれ。
新卒で食料品小売会社に入社。しかし小説家を目指して執筆活動を行っていた経験から、言葉でもっと人を惹きつける仕事がしたくなり一念発起。クリエイターとして就職情報会社に転職。以降、様々な業界の採用サイトやパンフレットの制作に携わる。20代の働き方研究所では記事執筆を担当。趣味はコーヒー豆の焙煎とラテアート。

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