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2021.11.24INTERVIEW

味の素冷凍食品・公式Twitterの中の人が考える「生活者とのコミュニケーション」。個人と個人が繋がり合う時代のコミュニケーションのあり方とは?

(写真提供:味の素冷凍食品株式会社)

味の素冷凍食品 公式ツイッターの中の人(@ff_ajinomoto) 様

味の素冷凍食品株式会社の公式Twitterの中の人にお話を伺いました。Twitterだけの限定情報や、冷凍食品にまつわるあれこれを気ままに発信する公式Twitter。今回のインタビューではそもそも企業の公式Twitterの中の人ってどんな人なの?という素朴な疑問から、企業の公式アカウントとして一般消費者と繋がりあうコミュニケーションのあり方についてといった真面目な内容まで、お話いただきました。また、「44万いいね!」がつき、メディアでも話題となった「冷凍餃子の手間抜き論争」から、企業が消費者と紡ぐナラティブ(物語)の背景についても迫りました。

 

「味の素さんありがとう!」から始まった公式Twitter。生活者と深い絆を築きたい!


―まずはご入社されてからTwitterの中の人になるまでの経緯について教えていただけますか

2010年に入社し11年目になります。入社直後は大阪に配属されスーパーで取り扱う家庭用冷凍食品の営業職として3年勤務しました。その後、2014年に本社に異動となりました。

本社では社内コミュニケーションの業務を担当し、主に社内報の作成をしていましたが、次第に仕事の幅も広がっていき、社内外のファン育成を目的としたダイレクトコミュニケーション業務も担当するようになりました。具体的には、工場見学の運用体系化などを行い、夏休みには一般のお客様をお迎えする親子工場見学ツアーも企画・運営し、なんだか旅行代理店みたいな仕事もしていました(笑)。

2017年からは社外コミュニケーション業務を担当するようになり、プレスリリースを書いたり、メディア対応をしたりといった仕事をしています。プライベートでは2人の子どもがいて、産休や育休制度を活用してお仕事を続けさせていただいています。

―食品業界には様々な会社がありますが、その中でも味の素冷凍食品に入社をされたのはどのような理由があったのでしょうか

もともと、「食品業界で働きたい!」という思いがあって就職活動をしていたんですよね。それも事務職とかではなくて、全国転勤のある営業職が良いと思っていた就活生でした。

当時の食品業界は非常に狭き門で、大量採用をしているような食品メーカーはほとんどありませんでした。だからこそ、特定の会社に絞り込み過ぎず色々な会社の選考を受けていて、味の素冷凍食品はその中の1社でした。

就職先を選ぶ基準としていたのは「一緒に働きたい人がいるかどうか」という点です。当社の選考が進んでいく中で「女性の働き方を見たい」と人事の方にお願いしたところ、快く応じてくれたんです。実際に直接お話をさせていただく機会もあって、人を大事にしてくれる会社だと感じ、当社への入社を決めました。

―そうして選ばれた味の素冷凍食品の社外コミュニケーションへの部署異動は希望されてのことだったのですか

産休・育休後、復職して1年というタイミングで、予想外の異動でした。当時は、転勤に伴い保育園を探すことにとても不安を覚えていた記憶があります。

異動後は社内コミュニケーション業務を担当していたのですが、2016年当時の社外コミュニケーションの担当者が産休に入るということで業務調整が発生し、後任として担当をすることになったんです。

―すると、本当に偶然に社外コミュニケーションの担当になったということなのですね。そこから、公式Twitterの中の人になったのはどのような経緯があったのでしょうか

Twitterの立ち上げは2020年の2月のことでした。以前より、消費者の購買は“何を買うか”ではなく、“誰から買うか”によって左右されるため、他企業との差別化について課題を感じていました。特に冷凍食品は技術もどんどん発展していて、商品での差別化は難しくなっています。そうなってくると、何をもって「購入」につながるのかと言えば、その企業のブランドが自分の価値観と一致しているかどうかになります。より企業ブランドとしてのコミュニケーションを強化していかなければならないと思いました。

「じゃあ具体的にどうやったらいいのか?」と考えていた時に、当社の「やわらか若鶏から揚げ ボリュームパック」で食物アレルギーの有無に関係なく、みんなで同じものを安心して食べられるようにと製品リニューアルがあったんですね。(※2020年2月より「小麦・卵・乳」不使用)

食物アレルギーを持つ方や、そのご家族の方から大きな反響があって、「味の素さんありがとう!」とSNSなどで書きこまれるようになっていったんです。商品ではなく、企業の取り組みに感謝を伝えてくださる方が増えていました。そういった声を上げてくださるお客様ともっと深く繋がろうということで、Twitterのアカウントの立ち上げを提案するに至ったんです。

―中の人自らの希望で公式Twitterはスタートしたのですね

コミュニケーションをとるための手段の1つとして、自社アカウントを持っていないと、フレキシブルに対応できないと思ったんです。もちろんSNSはリスクとも隣り合わせですので、他社の企業アカウントの事例やTwitter社が出しているガイドラインも参考にしてマニュアルを作成し、運用面での整備も進めていきました。

―もともとTwitterはよく使われていたのですか

公式アカウントを立ち上げると言った本人なのに、実はほとんど使ったことがなかったんです(笑)。個人のアカウントは持っていますが、月に一度開くかどうかといった程度で、公式アカウントの運用を始めてからエゴサーチのやり方も知りました(笑)。

―すると、公式Twitter立ち上げのきっかけになった「やわらか若鶏から揚げ ボリュームパック」の反響はどうやって見つけたのでしょう

この反響についてはインスタグラムで見つけました。その投稿をされていた方は食物アレルギーがあっても食べられる商品を日頃からSNSで探されていました。読んでいるこちらが、涙がこみ上げてくるくらいの感謝の想いをSNSで発信してくださっていて、もっと話が聞いてみたくなり「お話を聞かせてください」とDMを送って会いに行ったんです。

普段、どんなことに悩んでいて、どうやって情報を収集しているのかお伺いすることで、企業としてどのような点を配慮しなくてはいけないのかを教えてもらいました。そして、その時に「企業から歩み寄ってくれる、こうして目を向けて、耳を傾けてくれること自体が嬉しい」と言ってもらえたんですよね。

これまでは、スケールがそれぞれ異なる「企業」から「個人」に対して一方的なコミュニケーションを取っていたように思うのですが、そうではなくて、「個人」と「個人」としてコミュニケーションをとることが大事なんじゃないかと気付いたんです。

プレスリリースなどを書くときに「食物アレルギーを持っている人はこんなお悩みを持っていて…」といった内容は、インターネットで調べれば書くことはできます。ですが生活者の方の生の声や温度感というのは直接会って初めて知れるものですよね。

私の役割は会社の思いや考え、感じていることを社会に伝えるための橋渡しをすることだと思うんです。だからこそ、まず自分自身がきちんと理解をしていないと、自分の言葉で語ることができないと思います。アレルギーのある方がどのような気持ちなのかを知らなければ、自分の発信で当事者の方を傷つけてしまうかもしれない、そんな意識を持っています。

―この出会いが、中の人の活動にも影響を与えたんですね。それにしても、直接会いに行くというのはすごい行動力ですね

産休・育休を経て復職しても、子どもの発熱などで急に休まなきゃいけない、早退しないといけないこともありました。そうなっても周囲の支えがあったから仕事を続けられています。忘れがちですが、毎日誰かに支えられて生きています。だから、自分も誰かのためになるような仕事をしていきたいなと思っています。

座右の銘として「1日1謝」というのを掲げていまして、1日1回感謝し、感謝されるような生き方をしようと決めているんです。そのために何ができるのか考えたときに、当事者の方にお会いしてお話を聞いて想いを繋げていく…ということが思いついたんですよね。
 


「出番ですよ!」 フォロワーの応援に背中を押された「冷凍餃子の手間抜き論争」。

~「冷凍餃子の手間抜き論争」とは~
2020年8月、とある主婦が投稿したTwitterのつぶやきがきっかけとなった論争。夕ご飯に冷凍餃子を出したところ、子どもは喜んでくれたけれど、パートナーからは「手抜き」と言われたと嘆く内容でした。

この投稿が多くの反響を呼ぶ中、冷凍餃子をはじめ様々な冷凍食品を製造している味の素冷凍食品の公式アカウントから、『冷凍餃子を使うことは「手抜き」ではなく「手間抜き」です』との投稿がなされ、一連の投稿に40万を超えるいいね!がつき、さらに各種メディアを通じて、大きな話題となりました。
 

―大きな反響を呼んだ「冷凍餃子の手間抜き論争」ですが、そもそもなぜこの投稿に関わろうと思われたのでしょう

公式アカウントを立ち上げてから、冷凍食品を使うことに後ろめたい気持ちを呟いた投稿があればコミュニケーションを取るようにしていたんです。

コロナ禍で社会全体が暗くなる中で、ふさぎがちになってしまう人が多くいらっしゃったと思います。Twitterでも、「結婚式も挙げられないし、誰にも祝福されずに家事って言う負担だけ増えて、冷凍食品を使って手抜きしてしまう」といったご自身を責める投稿を目にすることもありました。

「冷凍餃子の手間抜き論争」のきっかけになった主婦の方の投稿はTwitterでバズってトレンド入りしていたことで見つけました。冷凍食品を使うことにネガティブな気持ちをお持ちの方への投稿には、その方に寄り添う姿勢で関わろうとしているのですが、トレンド入りしている投稿です。引用リツイートをしてしまえば、投稿者の方に飛び火してしまうかもしれない。だから、引用リツイートではなく、味の素冷凍食品の純粋な投稿として、少し距離を置いて投稿をしました。「冷凍食品を使って生まれた時間を有効活用していただけたら」という思いを発信したんですよね。

ただ、こうしたバズっている投稿に企業のアカウントが関与するのはどうなんだろうという葛藤はありました。そんな中、日頃からコミュニケーションを取ることでフォロワーになってくれた方々から、「味の素さんはこの件についてどう考えていますか?」「味の素さん出番ですよ!」「冷凍餃子って良いものですよね」「手抜きなんて批判に負けずに頑張ってください!」といった応援メッセージが続々と届いたんです。そこで皆さんの思いを代弁するということで投稿をしました。

―そして、その投稿がまた大きな反響を呼ぶことになったわけですが、その当時はどのように感じたのですか

予想外の反響でしたね。投稿の翌日にはお客様相談センターにご意見をいただくこともありました。会社としてこの投稿による反響にどのように対応していくか、という大きな問題になってしまったんです。だから正直なところ、最初は非常に落ち込んでしまいました。

そんな中、始業早々に「良い投稿していたじゃないか!」と社内でも背中を押してくれる人がいて、その言葉が支えになっていましたね。

そして投稿から1週間くらい経ったころ、Webメディアや新聞、テレビで好意的に取り上げられるようになって、ようやく「投稿して良かった」と思えるようになったんです。

―一つの投稿が一連の論争になっていきました。中の人としてこの論争の意義はどこにあると感じていますか

まだまだ冷凍食品を使うことに後ろめたさを感じる方がいる一方で、ポジティブに活用している方も同じくらい多くいらっしゃるということがよくわかりました。また、実際に「(手抜きだという)昭和な考え方ってまだあるの?」「働き方改革が進む中、家事の効率化を考えればどんどん使うべき」といった投稿もありました。Twitterは現実世界よりも時代が進んでいるような気がしています。

自分が普段生活する中では接することのない様々な価値観に触れ、知ることが出来たことは一つの意義だと思いますね。


「半分企業・半分個人」。「私らしさ」を大事にしながら思いを伝える。いてくれてよかったと感じてもらえるアカウントへ。


―フォロワーの方からの賛同や応援メッセージに背中を押してもらった投稿だったのですね。フォロワーの方との交流で意識されていることは何でしょうか

味の素冷凍食品が良い会社であると思っていただけると同時に、「中の人も良いよね」と思ってもらえるように交流しています。

そのための1歩として、なるべくフォロワーの方のアカウント情報を見て、「あ、この投稿の時にフォローしてくれた人だ」と覚えるようにしていますね。今となっては3.6万人もの方にフォローいただいているので、全員のアカウントを見ることがなかなか出来ませんが、いつもコメントをしてくれる方や、冷凍食品をきっかけに話をするようになってフォロワーになっていただいた方など、お友達づくりと同じように知り合ったきっかけや出来事は覚えていますね。

―そうしたフォロワーの方や投稿をされている方へコミュニケーションをとるときには、中の人が会社の代表になりますよね

その通りですね。会社の看板を背負っているのでリスクへの感度も高く持つようにしています。例えばジェンダーや宗教、時事問題などについての関与はしないようにしています。個人として様々な意見を発信することは良いことですが、企業の公式アカウントとして何らかの立場を示すことは控えるようにしていますね。

一方でTwitterは独特な世界であるとも思っています。企業の公式アカウントでありながら、投稿しているのは私という個人で、「半分企業・半分個人」のような存在だと思います。

そして、半分個人という存在である以上、作り上げたキャラクターを設定してしまうと仮面をつけてコミュニケーションを取ることになってしまうと考えています。コミュニケーションを取る相手は生身の人間なので、私のままの語り口調で、会社の代表・窓口として接していくスタンスをとるようにしていますね。

―投稿するタイミングは考えられているのですか

記念日とかイベント事は事前に投稿をしようと考えていますね。ただ、他の仕事もあるのでなかなか毎日投稿するといったことはできていません。その日のスキマ時間に何か発信できることがあればする、というようにしています。

―スキマ時間に投稿からユーザーとのコミュニケーションまで対応しているのですか

Twitterはお客様のまっすぐな想いを知ることができるので、時間があれば「味の素 冷凍」とかで検索して見つけるようにしていますね。エゴサーチして、大体1週間以内で「これは!」と思う投稿があればできるだけその時、コメントをするようにしています。

―そんな運用を通じて一番印象に残っているやり取りなどはありますか

一番印象に残っているというと悩ましいですね(笑)。個々のやり取りは全部印象的です。一つ挙げるなら、九州豪雨の被害にあわれた方の投稿でしょうか。

「豪雨で土砂が自宅の中にまで入ってきてしまって大変。その片付けでヘトヘトだから今日は味の素の餃子。こんなときでもいつも食べているものを食べられることが嬉しい」といった投稿をされていました。当社の商品が、いざというときに心の安らぎにも役立っていると分かったことは、冷凍食品のさらなる可能性を感じさせてくれました。

―最後に、中の人として今後の目標や実現したいことがあれば、教えてください

SNSを通して1人1人ファンを増やしていくのって「駆け出しのアイドル」みたいな活動をしていると思うんですよね(笑)。だから今年度中にファンレターをもらうことを、実は個人的な目標にしています(笑)。

それはそれとして、人事異動などで、いつかは卒業するタイミングが来てしまいます。その時にファンであるフォロワーの方々から「味の素冷凍食品さんがいてくれてよかった」と思っていただければ、それ以上のことはないと思います。
 
 


味の素冷凍食品株式会社
「冷凍食品の提供価値を高め、世界中の人々の健康で豊かな暮らしに貢献し、そして、より良い地球環境づくりに貢献すること」をミッションとしている。
素材と製法にこだわり、最もフレッシュな瞬間と最もおいしい瞬間を閉じ込めた冷凍食品を通じて、「FRESH FROZEN」を具現化し、食べる人、使う人に「感動」と「喜び」をお届けしながら、人々の健康で豊かな暮らしに貢献。同社の「ギョーザ」は1972年に発売して来年で50周年を迎えるロングセラー商品。2003年度から18年連続で冷凍食品売上1位(※2003年度~2020年度市販用冷凍食品単品売上金額ベース。同社調べ)。
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