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2022.03.23INTERVIEW

「100年のワクワクと笑顔を。」アサヒ飲料のCSV推進担当者が考える企業の社会貢献

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
アサヒ飲料株式会社 コーポレートコミュニケーション部 プロデューサー
大沼 美由紀(おおぬま みゆき)様


企業としてSDGsへの積極的な取り組みをすることが社会的な責務となりつつあります。今回はアサヒ飲料株式会社でCSV※推進を担当されている大沼さんにお話を伺いました。「こども食堂」をはじめ、全国の幼稚園へカルピスをプレゼントする取り組みや、小学生を対象に出前授業を行うなど、次世代を担う子どもたちの育成に力を入れる理由や、持続可能な社会を実現するために企業として取り組むべきこと、そしてその実現に取り組むにあたって必要な考え方とはー。第一線で活躍される大沼さんのお考えに迫りました。

※CSV
Creating Shared Value(=共通価値の創造)の略称。企業が社会ニーズや問題に通り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味する。2011年に『競争戦略論』で有名なアメリカの経済学者マイケル・ポーター教授が提唱した。

 

人に関わる仕事がしたい。人事の仕事からCSV推進へ

―アサヒ飲料への入社理由と、その後、どのような経緯があって現在のCSV推進の仕事を担当されるようになったのか教えてください

当社には新卒で入社しました。大学時代経営学の中で「ヒューマンリソースマネジメント(人的資源管理)」を専攻しており、ヒト・モノ・カネを経営資源として、どのように企業が成長していくのかについて学びを深めていました。特に、モチベーション理論など、ヒトを資源として企業の成長を考えることに興味を持ち、そこから人事の仕事をしてみたいと思うようになったんです。

人事の仕事をしたいという思いを持ちつつ、では、どういった会社でやるのかと考えたときに、食べることが好きだったので、飲料や食品のメーカーという軸で就職活動をしていました。

今は人事部門以外の社員が面接を担当することも一般的になりましたが、その当時は面接官が人事部門の人で構成されていたんですよね。それを知らずに、面接では、とにかく「これからは人事の改革の時代です!」と熱く語っていました。そんな話をする学生は珍しかったようでしたし、将来の上司にあたる人に直接アピールしていたわけで、結果として印象に残ったんでしょうね(笑)。

そして、最初の配属先は人事部門となり、主に採用業務を担当しながら、3年目の時には学生時代に挑戦したかった、社員の意欲視点から人事制度の改革に繋げるための社員満足度調査も担当するようになりました。

その後は支社へ異動し、営業企画などの仕事も経験することで、改めて人のモチベーションが業務や組織に及ぼす影響を実感し、モチベーション向上に関わる仕事がしたいと思うようになりました。キャリアに関する資格も取得し、年1回のキャリア申告制度などを活用して意向を伝えていった結果、現在のコーポレートコミュニケーション部に異動となりました。人事とは別の形ですが、人の心に訴える仕事が出来ることから、充実感を覚えています。

―CSVという仕事については、偶然、担当されることとなったのでしょうか

はい。コーポレートコミュニケーション部は大きく二つのグループから成り立っており、一つは私が所属しているCSV推進をするグループ、もう一つは広報的な役割をもち社内外とのコミュニケーション推進を担うグループとなっています。

CSV推進グループは、異動当時はESG推進グループという名称で、ESG投資が注目され始めたこともあり、経済・環境・ガバナンスの観点での活動を検討・実行していました。ただ、正直なところ発令が出たばかりの時は発足して数カ月の部門だったこともあり、何をするグループなんだろうとわからなかったのが本音ですね(笑)。

―CSV推進担当としてはどのようなお仕事を担当しているのですか

大枠でいうと次世代を担う子どもたちの育成支援を中心とした施策を担当しながら、社員と社外との関わりを演出し、メーカーとして製品軸とは異なるところでワクワクを高め、笑顔を生み出す仕事をしています。こういったところは、人事時代のやりがいと共通しているかもしれません。

―人事担当との共通項はどこにあるのでしょう

社員が社外に出向き色々な活動をしています。例えば小学校に行って出前授業を行うプログラムなども担当しています。営業部門や生産部門など、部門横断的かつ新入社員から役員まで、役職横断的に多くの社員が参加することで産学連携の教育に取り組んでいます。

子どもたちが授業を受けて笑顔になることはもちろんですが、授業に行った社員がそれ以上に笑顔になるんです。授業に参加することによって、改めて自分の仕事や自社と向き合うようになり、会社へのロイヤルティや仕事へのモチベーションアップにつながり、社員満足度を高める活動に関わることが出来ていると自負しています。
 

次世代を担う子どもたちのために。アサヒ飲料の取り組みとは

―社外での活動や出前授業というのはどういった取り組みですか

いくつか例を挙げると、一つには全国の幼稚園、保育所にいる園児を対象とした「カルピスひなまつりプレゼント」という活動があります。これは50年以上の歴史のある活動で、「カルピスの生みの親」である三島 海雲がはじめた幼稚園の子どもたちにカルピスをプレゼントするというものです。なぜひな祭りの日にカルピスかというと、伝統的に「桃の節句」である3月3日には「白酒」を飲むという風習にならってのことです。子どもは白酒(アルコール)を飲めないため、白酒の代わりに白いカルピスで乾杯したら喜んでくれるのではないかということで始まりました。

今はひな祭りの時期になると、ご希望いただいた全国の幼稚園と保育所の約240万人の園児にカルピスをお届けしています。また、身体だけではなく、心も健康になってほしいという想いから、カルピスと併せて、園での読み聞かせに適した絵本も一緒にプレゼントしています。絵本作品は、コンセプトやテーマ決めの段階から、絵本作家や出版社と相談して制作してきました。その数は、これまでに37作品にのぼります。

また、先ほども少しお話に上がりましたが、小学生には「「カルピス」こども乳酸菌研究所」や「三ツ矢サイダー 水の未来と環境教室」出前授業プログラムを提供しています。私の役割は、初めて授業を担当するという社員でも対応できるようにマニュアルを作成したり、授業進行のポイントを落とし込んだりといったこともしています。

先生と生徒の大切な授業の時間を譲っていただいての活動です。教育プログラムとして、学習指導要領に沿った内容を意識して作成しており、参加する社員がきちんと子どもたちと向き合えるように、授業に参加するチームごとに2時間ほどかけて事前研修もしています。

今はコロナ禍ということもあり、対面での授業が難しくなっているため、オンラインで開催する「アサヒ飲料発酵文化教室」が活動の中心となっています。1時間目は学校の先生が担当し、一定期間をかけて自分の住んでいる地域にはどんな発酵食品があるのかを調べるグループワークを行ってもらいます。後日、2時間目としてグループワークの調査結果を当社の社員に発表して講評を受けるという内容です。
 


こうした取り組みの他にも、SDGs関連の授業などで学校の先生に使ってもらえるような小学校向けの副教材を作成し、希望する小学校にお届けするということもしています。

―コロナ禍での活動という点では、こども食堂への支援活動も注目を集めていますね

コロナ禍になったからといって始まった取り組みではなく、実はその前から継続的に実施していて、私は前任から2020年に引き継ぎました。

三ツ矢にちなんで語呂合わせで3月28日を「三ツ矢の日」としていて、量販店の店頭で三ツ矢サイダーを営業部門以外の社員も参加して大々的にPRし、試飲してもらう全社活動を行っています。カルピスの誕生日である7月7日にも、同じように社員総出でプロモーションを手掛けています。

こども食堂の寄付には、この二つの催事で生まれた利益の一部を充てており、アサヒ飲料の全社活動で生まれた寄付金をこども食堂支援に充てるという構図になっているんです。

こども食堂というと、貧困で食事が満足に食べられない子どもたちの支援というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には地域の人が集う居場所であり、健康な食事を届ける場でもあります。例えば仕事で両親の帰りが遅く孤食となっている子どもたちに、皆で楽しく食事を食べる機会を提供する役割も担っています。

私たちはそういったこども食堂の内、全国100施設を毎年選定し、運営費の助成や当社商品を提供しています。また、長期的なこども食堂の発展のために、各地域におけるこども食堂同士のネットワークを広げる活動にも助成しています。多くのこども食堂は、維持管理や運営にあたってのノウハウ共有の場がなかったり、相談し合える機会が少ないことが現場の課題としてあり、地域の中で支援者同士がつながることで、活動の質を持続的に高めることができると考えています。
 


―そもそもこども食堂をはじめ、こどもたちの支援をするようになった背景には何があるのでしょう

当社には、発売から100年以上の歴史があるブランドが3つ存在します。(三ツ矢サイダー、ウィルキンソン、カルピス)これら世代を愛されてきたブランドを保有する当社としては、この先100年を創っていく将来世代に役立つことをしていきたいと思っています。そして、三ツ矢サイダーにしても、カルピスにしても子どもたちが特に好んで飲んでくれる商品です。寄付や商品の提供を通じて、“地域の居場所”に笑顔を創出できることは、“豊かな地域を共に創る”という「地域共創」の一つの形です。SDGsの観点からも、子どもの貧困ということも話題になるようになってきました。これらの理由から、こども食堂を支援することは当社の役割の一つであると考えています。

―CSV推進を担当する大沼さんは、どんな目標を掲げているのでしょうか

多くの企業が、それぞれの強みを活かして社会への貢献に様々取り組んでいます。一方で、それらを、お客様や社会に十分に発信しきれていないという課題もあると考えています。

私たちがCSVを推進する理由は、アサヒ飲料という会社が世の中の人々にいちばん信頼される企業となることで、永続的に事業を発展・継続することに繋がると考えているからです。事業の強みを活かして競争力を高め、更に利益を生み出すことでもっと社会に役立つ取り組みを可能にしていくという循環を描きたいと考えています。

目先の利益を追うのではなく、支援した対象の方に喜んでいただき、そしてそのことをより多くの方に知っていただき、最終的にはそんな取り組みをしている企業の商品だったら買ってみたい、また、そういう取り組みをしている企業で働いてみたい、と思ってもらうようにすることがミッションだと考えています。

様々なステークホルダー全体を巻き込んでウェーブをつくる

―そもそもCSR活動や、CSV推進を掲げる企業が果たすべき役割とは、どんなものであるとお考えですか

「餅は餅屋」という言葉がある通り、それぞれの企業・自治体・個人が持つ強みというものがあります。アサヒ飲料で言えば、商品やサービスを通じて世の中にワクワクと笑顔を届けること。そして、サプライヤー、物流やEC、店舗、地域の人々など色々なステークホルダーを巻き込んで支援の輪を広げ、ウェーブにしていくのが役割だと考えています。

―ウェーブにしていく、ですか

はい。例えばこども食堂の取り組みをしている中で助成団体と話をする機会がありました。その中で、何か社会に貢献したいけれど何をして良いのか分からないという企業や経営者が多いことを知ったんですね。

単独では難しいこともあるかもしれませんが、ちょっとした流れが目の前にあれば、気軽にアクションが起こせるかもしれません。そんな風に、当社が動き、そこに一緒になって参加してくれる会社が増えてくだされば、社会に貢献できる潮流が生まれるのだと思います。

当社の提供できるサービスの一つに「寄付型自動販売機」というものがあります。自動販売機は設置先様に利益の一部を還元するようになっていることが多いのですが、その利益の一部を自身で選択した支援先に寄付することが出来る仕組みです。

個人でも、企業や経営者でも、社会のための活動へ一歩踏み出したいけれど、何から始めようか悩んでいる場合も多いようです。「寄付型自販機」のような、手軽な支援のきっかけを提供することで、より多くの人が行動できるようになっていき、さらに社会に貢献出来れば良いなと考えています。

―20代の若者は就職先を選ぶときに企業の社会貢献性を重視する他、自身の仕事を通じて何か貢献したいと考える人が増えています。自身が社会に貢献するために、どんな意識や姿勢を持つことが大切になるのでしょうか

あくまで個人的な考えではありますが、未来志向であり続けることが大事ではないでしょうか。何か社会に貢献したい、そのためにはこんなことをしてみたい、そう思ったとしても、どこか現実離れしたアイディアだと思考にストッパーをかけてしまう人もいるかもしれません。でも想像することは自由なことですよね。社会課題を解決しようというアプローチが難しければ、どんなことをしたら自分自身がワクワク出来て、かつ未来も明るくなるか、考えてみてください。

カルピスの出前授業では、原料の生乳から、乳酸菌や酵母の発酵の力でカルピス独特の爽やかな味や香りがつくられることを起点に、「発酵」には無限の可能性があることを伝えています。例えば、たい肥やバイオエタノールも発酵技術によるもの。その発酵技術を用いて、この先、どんなことをしたらワクワクを生み出すことが出来るのか、子どもたちには授業の中で考えてもらっています。

ある授業で、弟が生まれたばかりという男の子が、発酵技術を使って赤ちゃんが泣いている理由が分かる薬を作りたいと言っていました。お兄ちゃんとして赤ちゃんの考えていることを知ってみたかったんでしょうね。

大人からすると、そんなこと出来るわけないと思うかもしれませんが、子どもは出来るか出来ないかを考えるのではなく、何が出来たら自分たちや世の中がワクワクするのかという視点で柔軟な発想をしています。現実的じゃないよね、と考えを止めてしまわない思考のあり方が大事になってくるのではないでしょうか。不可能だと思われたことが出来るようになった方が、達成時のインパクトも大きいものです。

一方で、最終的な目標は高く持つことは大事ですが、いきなり難しい挑戦をしようとすると達成が遠のいてしまうものです。まずはできることから始めてみることが大切です。そのためには人や本からたくさん情報を掴むとか、何か資格を取得するとか、そういった小さな一歩でも良いと思います。一歩ずつアクションし、成功体験を積んでいってほしいですね。

―大沼さんご自身は、思考にストッパーをかけないために、どんな取り組みをしているのでしょうか

夜寝る前に浮かんだアイディアを忘れないうちにメモしておくのは意識的にしていますし、信頼できる仲間や友人とフリーディスカッションをすることもしています。

心置きなく話せて、自分のアイディアに対し「こう考えてみたら?」と、話を膨らませてくれる仲間はテレワークで1人で仕事をすることが増えた今でこそ、より貴重であると思いますね。

こうした建設的な話が出来る仲間が3人はいるといいよ、と私もアドバイスをもらったことがありまして、本当に、これが結構良いんですよ。お仕事をされている方であれば、在籍されている部署の方だけではなく、それ以外の方はもちろん、社外の方でも良いと思います。そうした心理的安全性が担保されている仲間と一緒に、ぜひ自由にアイディアを出し、やってみたい事の実現に向けて一歩踏み出してみてほしいですね。
 









アサヒ飲料株式会社
1972年4月1日創立。「三ツ矢サイダー」「ウィルキンソン」「カルピス」をはじめ、ロングセラーブランドを持つ飲料メーカーとして、「お客様にとってなくてはならない飲料会社になる」ことに挑戦し続けている。社会との約束として『100年のワクワクと笑顔を。』を掲げ、ココロとカラダに驚きや感動、笑顔を届けるという想いの下、商品・サービスを磨き上げつつ、社会で一番信頼される企業であり続けるために、社会との共有価値(CSV)推進にも注力。「健康」「環境」「地域共創」という3つのマテリアリティごとに、最大限の価値創造を追求し続けている。
 

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.

1991年12月生まれ。
新卒で大手新聞社に入社。記者として取材・記事の執筆を経験後、Webサービスを手掛ける企業に転職。約20名のメンバーのマネジメントの傍ら、Webサイトの開発・サイトの集客プロモーション・取材やライティングを幅広く担当。20代の働き方研究所では、企業へのインタビュー取材・取材記事執筆を担っている。
#カスタマーサクセス #コンテンツディレクション #イベントプロモーション #仕事終わりの晩酌が日課

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