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2022.06.22INTERVIEW

一人ひとりがパーパスを持つ人へ。ユニリーバが目指す「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社
ヒューマンリソース
HRマネジャー-HRBP(ビジネスパートナー) バスマジェ 詩織(バスマジェ しおり)様(写真右)
アシスタントHRマネジャー 小野 菜生(おの なお)様(写真左)


企業の存在意義である「パーパス」。近年はあらゆるステークホルダーに利益をもたらす経営こそ、企業が目指すべき姿勢であるとして、パーパスを打ち出す企業が増えてきています。今回、お話を伺ったユニリーバでは、多くの企業に先駆けて2011年頃にパーパスを策定し、以来、企業経営やプロダクト開発、社員の教育・育成などの根幹としています。先駆的な同社の日本法人で人事を担当する、バスマジェ様と小野様に同社の取り組みやその狙いについてお話いただきつつ、そもそもなぜパーパスが必要とされるのか、企業だけではなく個人のパーパスをいかに見つけ、どのように活かしていくのかについてもお話いただきました。

創業時の想いを形にしたユニリーバのパーパス

―まずはお二人がユニリーバ・ジャパンにご入社されるまでのご経歴について教えてください

(バスマジェ)私は新卒で入社し、カスタマーディベロップメントという、いわゆる営業部署でキャリアをスタートし、そこで3年ほど経験を積みました。その中で、将来どんな仕事をしたいのかと考えた時に「人事」の仕事に挑戦したいと考え、社内の公募制度を利用して現在の部署に異動しました。

それからは新卒採用を担当し、採用活動の通年化や戦略立案といったことも経験しました。その他にもダイバーシティに強い関心をもっていたことから、例えば同性パートナーシップの制度制定の取りまとめなども担当し、ユニリーバ・ジャパンにおけるエクイティ、ダイバーシティ&インクルージョン(EDI)における戦略や重点分野を定めるといったことにも携わりました。

そして2018年には育休を取得し、1年後に復職して、そこからHRBPとして仕事をしています。その後、2020年にマネジャーとなり、より業務範囲が広がっていきました。買収した企業の統合作業や紅茶事業の譲渡に伴うプロジェクトの他、昨年からはマーケティングもBPの領域として担当しています。従来担当していた新卒採用についてもマネジメントなどをしています。

(小野)私は中途で入社しました。2017年に新卒で国内の飲料メーカーに就職し、2年5ヵ月ほど同社でキャリアを積みました。営業部署への配属となったのですが、私が関心をもっていた領域はCSVを推進する部署やダイバーシティを担当する人事部でした。なかなか異動の機会をいただけなかった中、やりたいことが明確であったこともあり、それを実現できる会社に転職したいと考え、次に外資系のコンサルティングファームに転職しました。

その会社にはインクルージョン&ダイバーシティ(I&D)の人事戦略に特化した部署があり、そこで2年弱キャリアを積みました。プロジェクトのサポートや様々なプログラムの運営の他、I&Dの中でWell-beingについての新たなプロジェクトの立ち上げがあり、そこにも関わっていました。

コンサルティングファームでの仕事はもちろん楽しく同僚や上司にも恵まれたのですが、「一緒に働く人」と「事業」と「人事としての仕事の内容」の3つのワクワクが満たされるところで働きたいという気持ちが強まっていきました。新卒で飲料メーカーに入社したように、もっと目に見える価値を社会に届けたいと考え、メーカーの人事職への転職を考えるようになりました。

そこからユニリーバ・ジャパンに出会い、ここであれば自分が希望するような仕事ができると思い、入社を決めたんです。

入社してからは新卒採用をメインに担当していますが、これからはEDIの領域の仕事にもどんどん挑戦していきたいと考えています。

―本日は「パーパス」をテーマにお話を伺っていきますが、パーパスを2011年頃には策定されています。非常に早いタイミングかと思いますが、その背景や狙いについて教えてください。

(バスマジェ)当社ではパーパスとして「To make sustainable living commonplace(サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に)」を掲げています。2011年頃に策定したものではありますが、それまでパーパスに掲げているような考え方を何も持っていなかったわけではなく、創立当初から脈々と受け継がれている想いを改めて明文化しました。

ユニリーバのルーツは1880年代のヴィクトリア時代のイギリスまでさかのぼることができます。当時のイギリスでは衛生についての習慣がなく、そのために多くの方が病気になって命を落としていました。

それを何とかしたいと考えた創始者のウィリアム・ヘスケス・リーバ卿が「サンライト」という石鹸を発売したのが当社の始まりです。そのサンライトの箱の裏には「Make cleanliness commonplace(衛生を暮らしの“あたりまえ”に)」という文章が記されており、創始者の願いが込められていました。そして、その願いの通り、サンライトを通じて人々に衛生的な習慣が広まっていきました。

そこから140年ほど経ち、世界を見渡すと課題はより複雑になってきています。衛生に関する問題もありますし、貧困や気候変動なども向き合わなければならない課題です。そのような中、私たちが事業を通じて実現したいことは何かを問い直して生まれたのが、現在のパーパスである「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」です。サンライトの箱に書かれていた「cleanliness」の部分が「sustainable living」に変わっています。

つまり、誰もが清潔に暮らせることだけではなく、おいしく栄養のある食事がとれること、地球の限界を超えずに豊かな暮らしを送れること、自分らしく働けること、フェアに扱われること。そうした本来“あたりまえ”であることを実現することが、企業としての目的・存在意義であると再定義したのです。

リーバ卿の話は入社してからすぐに会社の沿革として全員に話していますので、新しいパーパスも驚きをもって受け止められたというよりは、ナチュラルに一人ひとりの中に落とし込まれているように感じます。

―そのような背景があったのですね。お二人がご入社された時点でパーパスが掲げられていましたが、ご入社の時点でどのようにパーパスを感じ、受け止められたのでしょうか

(バスマジェ)そもそも就職活動をしている中で絶対に自分の中で譲れないと考えていたことは、その会社のビジョンや社会に届けようとしている価値が、自分がそうなって欲しいと思う世の中と通じているものなのかということでした。

日々仕事をして行く中で、都度、ビジョンや意義を考える人は多くありません。目の前のことでいっぱいになって、その先に何があるのかを考えることは難しいものだと思っています。ですが、会社のビジョンや事業の意義に共感でき、自分の仕事が会社を成長させ、その結果社会に良い変化を起こしていくということが理解できていれば、たとえ大変な仕事であっても向き合うことができるのではないかと思ったんです。

だからこの考えを大切にしてきましたし、ユニリーバのパーパスは自分の大事にする価値観と合致するものだと思いましたので、納得感をもって入社できました。

―具体的にどのようなところに共感されたのでしょうか

(バスマジェ)自分の性質として、マイナスをゼロにしていく仕事よりも、それがあることで生活に彩りや幸せが生まれるものに魅力を感じていました。シャンプーはなくても生きていくことはできるものかもしれませんが、毎日のシャンプーの時間は生活をより豊かにしてくれるものですよね。

そうした幸せやエネルギーを与えるような会社であり、そうした生活をあたりまえのものにしていくような考えにシンパシーを感じました。

―小野さんはどのように感じられましたか

(小野)まずパーパスがあるということに、ワクワクした気持ちを持ちました。多くの企業がビジョンや理念を掲げ、ゴールなどもしっかりと定めています。ですが、社員全員が自身に落とし込み、自分ごと化できているかというと、実際にはそうではない会社も少なくありません。その一方、パーパスとして向かうべき方向が共有されているユニリーバは、非常に強い組織だと感じたのです。「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」を実現するために、どの部署も同じ方向を向いて動いていることが非常に明確でした。

そうした会社で働くことに期待感を持ちましたし、チームとしての団結力も高まるものだと感じていました。パーパスの内容そのものも素晴らしいのですが、それが一人ひとりに落とし込まれ、情熱を注いでいる姿勢に強く魅力を感じました。
 
 

人の持続可能性に向き合い、自身のパーパスを見出す仕事

―小野さんのお話にあったように、パーパスは策定するだけではなく一人ひとりに落とし込まれ、自身との一致点を探していかなければならないものだと思います。お二人は今のお仕事の中で、どのような点でパーパスとの一致や共感できる点を見出しているのでしょうか

(バスマジェ)「サステナビリティ」という言葉の中には色々な持続可能性が含まれており、人事という仕事においては、「人の持続可能性」に関わっていると思っています。

ユニリーバには事業戦略であり、ステークホルダーへの貢献を表した「ユニリーバ・コンパス」という指針があります。コンパスの中心にはパーパスが掲げられていますが、それを支える信念の一つに「People with purpose thrive(パーパスを持つ人は成功する)」というものがあり、パーパスを持つ人々を大事にしていこうという考えを表しています。

今の世の中は非常に複雑で、不確実な時代です。市場にも次々に色々なプレーヤーが参入していますので、ビジネスをするにあたっても「A」という方針を打ち立てても、すぐに「B」という方針に転換しないといけないこともよくあります。

そうした中で自分と会社を繋ぎとめるものは、この会社で仕事をやっていくことの意味、すなわち個人のパーパスになるのだと思います。それを感じられる人を採用し、育成し、根付かせていくということが人事の大きな役割になります。

BPという立場にあって、日々、色々な社員の夢や、今後どんなことをしたいのかという話を聞いています。どのように育成したら実現できるのかということを個人レベルでも考えていますし、組織の観点でもどんなチームであれば良いのかということを深く考えています。

この部署が存在する意味は何か、この部署は社会にどんなインパクトを与えたいのかという部署のパーパスも突き詰めていきます。会社は個人の集合体ですので、個々人が自分のパーパスを持ち、部署や会社のパーパスと一致する点を見出して働けるようにすることで貢献したいと思っています。

そしてやはりEDIです。世の中にはマイノリティということだけで、本来であれば当然の権利を享受できない人々がいます。そうした現実に対し、ユニリーバとしてどう向き合っていくのか、「違いがあって“あたりまえ”だよね」という社会にしていくためにどうしていくのかを考え続けています。

例えば「LUX SOCIAL DAMAGE CARE PROJECT」では「♯性別知ってどうするの」というキャンペーンを実施し、ユニリーバ・ジャパンのあらゆる採用で履歴書から顔写真と性別欄を無くし、氏名欄も名字のみとして、ジェンダーへの無意識の偏見までも取り除く選考を始めました。

反対意見もありましたが、ブランドを通じて取り組みや考えを伝えることで、社会は変えられるということを実感しましたし、他の仕事でも同じように意義を感じながら働くことができています。

―小野さんはいかがでしょうか

(小野)私は新卒採用だけではなく社員の育成も担当しています。パーパスを見つけるのは自分自身ですが、見つけるための時間をつくったり、マインドセットの機会をつくったりすることは人事の責任の範囲だと考えています。

直近の例では外部講師の方をお招きし、その日から実践できるような業務効率化の方法を学ぶセミナーを開催しました。年次に関係なく案内をかけたところ、過去と比較しても多くの社員に参加してもらえました。

このセミナーは、自身のパーパスや、やりたいことを考えることに向き合う時間をつくることを目的として実施しました。結果、参加した方からはポジティブなフィードバックをたくさんもらうことができましたね。

私の仕事は皆にパーパスを考えたり、感じたりしてもらうための機会創出をすることです。新卒採用の担当として新入社員や若手社員を育成するときだけではなく、部署や年次を超えて色々なところでそうしたことができたらいいなと思っています。

―今のお話にあったように、ユニリーバ・ジャパンでは一人ひとりの社員にパーパスを意識してもらうためのワークショップに取り組まれているそうですね

(バスマジェ)ワークショップ実施の背景としては、先ほどの通り、世の中が複雑化して臨機応変な対応が求められる時代に、会社と自分を繋ぎとめるものは何かを考えることが非常に重要になってきたからということがあります。

ワークショップ実施の前からパーパスはありましたし、個人としてのパーパスを意識することの大切さは文化として根付いていましたが、ではそれをどのようにやっていくのか、というテクニカルな面をサポートするために始まりました。

個人のパーパスと仕事を結び付け、「どうしてあなたはこの会社にいるの?」「仕事を通して何を実現したいの?」「どんな貢献をしていきたいの?」ということを考えていってもらうような仕組みをつくっています。

具体的には4つの質問に対して、自分と他者で深掘りをしていくというものです。その4つというのが、「私が幼かったころ」、「私を形作ったチャレンジや試練」、「私をキラキラさせた興味のあったこと」、「自分自身の成功ストーリー」です。

このテーマをそれぞれ「これでもか!」というくらいに掘り下げていくことで、そもそも自分がどんなものに興味をもってきたのか、どんなときに踏ん張ることができるのか、自分にとって成功とは何かといったことを深掘りし、自分が人生で本当に大切にしたいことを見つけていくことができるようになっています。

これを一人ではなくグループで行うのですが、当然、他の人は自分とは違う価値観を持っていますよね。異なる価値観や意見に対し、興味を持って質問を投げかけたり、答えたりを何回も繰り返すことで、「こういうことがしたくて仕事をしているんだ」ということに気づけるようになっていくんです。

―ワークショップへの参加を経て、社員の皆さんはどんな気づきを得て翌日からの仕事に活かすことが出来ているのでしょうか

(小野)ワークショップの最後にお伝えしているのは、ワークショップに参加したからといって、すぐに個人のパーパスが見つかるわけではないということです。もちろん、見つけることがゴールではあるのですが、見つけて終わりではなく、ずっと自身を磨き続けていくことが大切になります。

私も「ワークショップに参加すれば自分のパーパスは見つかる」と思っていたのですが、磨き続けることの大切さを伝えてもらい、確かに1日や2日で自分の人生を振り返られるものでもないし、会社のパーパスだって一日で出来上がったわけではないと気づきました。長い年月をかけて創始者の想いが磨きに磨き上げられて今の形になっているのですから、個々人のパーパスも同じですよね。

そのことに気づくと、モチベーションが高まり、「どのように物事を見たら良いのか」「何にチャレンジしたら良いのか」「より深く自分を内省しよう」といった意識に変っていきます。

年齢や経験を重ねる中で、パーパスは変わることもあります。子どもが生まれたり、孫が生まれたりといったライフステージの変化がきっかけで変わることもあるでしょう。大切なことはパーパスを一つに定めることではなくて、その時々で何を成し遂げたいのか、何のために仕事をしているのか、問い続けることにあると思います。

その上でワークショップに参加した社員に話をきくと、参加者同士のフィードバックを通じて、自分が周囲にどんな影響を与えることができるのかをより深く考えるようになったという声がありました。若手社員であっても自分ができることをしようと、部署全体の業務効率の改善提案をした例も聞いています。

(バスマジェ)パーパスを見つけた結果、私のように部署異動という選択をとった社員もいますし、中にはユニリーバではなく別の会社で働くことを選んだ社員もいました。寂しさはありますが、ユニリーバという会社があったから自分のパーパスを見つけることができたのなら、それはそれで良いことなのではと思いますね。
 

採用活動はお互いをディスカバーし合うこと

―新卒採用においても選考に参加された学生のパーパスを聞いているそうですね

(小野)はい。新卒採用においてもワークショップと似たような取り組みをしており、選考に参加してくれた学生の皆さんに自分自身のパーパスとは何かということを聞いています。もちろん選考の日にパーパスを見つけられない方もたくさんいます。

ですが、私がワークショップで体験した気づきを伝えると、「今日は自分のパーパスを見つけられなかったけれど、これから感度を高めて物事をみていきたい」というようなポジティブな反応が返ってきます。簡単に完結するものではないからこそ、面白みや深さがあるものだと思います。

―お二人から見て、採用活動においてパーパスが果たす役割や効果は何だと思いますか

(小野)どの企業にも人となりを知る面接があると思いますが、ユニリーバの場合にはその時間を非常に多く割くようにしています。選考プロセスの中に学生の皆さんのパーパスについての面談があります。

面談では、私たちが学生の皆さんの人となりを知りたいことはもちろんですが、学生の皆さんも自分自身のことをよりよく理解し、自分ならどのように社会にインパクトを与えることが出来るのか考えを深めてこの場を後にしてほしいとお伝えしています。

採用選考というと、企業が学生を一方的に評価し続けるイメージがあるかもしれませんが、ユニリーバの選考は「多方向のプロセス」です。当社に入社することになったとしても、そうならなかったとしても、学生の皆さんの人生は続いていくものですよね。ですので、ユニリーバの選考に参加することによって新たな糧や気づきを得たり、自分自身に自信を持てるように一緒に模索していきたいと思っているんです。

(バスマジェ)パーパスに関する面談をする選考プロセスを「ディスカバリーセンター」と呼んでいるのですが、ユニリーバについてディスカバーする、自分自身についてディスカバーする、そして、ユニリーバも学生の皆さんをディスカバーするという、色々な意味を込めています。

ユニリーバと少しでも接した人たちが、自ら新しい気づきを得てほしい。こうした選考方法をとることも、サステナブルな社会に近づくと信じて私たちは仕事をしています。

このような価値観を持った会社であることは広く伝わっていると思います。選考に臨んだ学生の皆さんの中にも「こんなに自分のことを聞いてくれる会社は他にはなかった」と言ってくれる方がいて、個人を尊重している会社だと思っていただけているようです。

新卒採用では入社とならなくても「中途採用に挑戦できるように他の会社で経験を積んできます」と言ってくださる方もいるくらいです。

(小野)当社の新卒採用は1年後に再チャレンジできるシステムを採っています。合否連絡は必ず電話でするようにしているのですが、その電話でも「1年後に必ず選考を受けます」と言ってくれる学生の方もいますね。

就職活動で不安なことはOne of themな感覚と言いますか、「自分の代わりになる人はこんなにいる」、「こんなに多くの人と戦わないといけない」、「どこまで自分のことを見てくれるのだろう」というような感覚をもってしまうことだと思います。

ところが、ユニリーバの選考はとことん個人と向き合います。だから、もしミスマッチがあったとしても学生は納得できるんです。そして、何がマッチしなかったのか、何が不足していたのかを分析しなおして、1年後に再チャレンジしてくれる方も本当にたくさんいるんです。

就職活動では、本来の自分を出さず、期待される自分を演じてしまうこともあるものです。私たちは「Be yourself」という考え方を大切にしており、採用活動においても、自分らしさを大事にしています。私たちが学生に何をやらせたいのかではなく、学生がやりたいことを見つけ、それが当社にマッチするかどうかを見つけていきたいと考えているのです。
 

自分自身のパーパスを見つけるために

―ここまで様々なお話を聞かせていただきありがとうございます。最後に、学生や20代の社会人が自分自身のパーパスを見つけるためにはどうすればいいか、お二人からアドバイスをお願いします。

(バスマジェ)まず、パーパスを見つけることは“あたりまえ”のことだと思っています。過去、いわゆる団塊の世代などの人たちは、同世代にたくさんの人がいて、考え方などが同一であることがたくさんのものを作るにあたって効率的であると考えられてきました。

それが今や、労働人口はかなり少なくなっていき、「この仕事は本当に人間がやる意味があるのか」とか「この仕事は私がやるべきことなのか」ということを日々問うていかなければならない時代となりました。単一性だけでは勝てない世の中になったということです。

そうした中、パーパスを見つけるということの意味は「自分らしいとは何か」「自分の強みは何か」ということが分かり、「どのように社会とかかわっていくのか」という判断基準の一つになるものだと思っています。

ユニリーバにはパーパスを根幹に据えた「コンパス」という道標があるように、個々人にも道標をもって欲しいと思っています。

ただ、パーパスは1日で見つかるものではありません。「見つからない」と言って悲観する必要はありません。では見つけるためにどうすれば良いのかと言えば、日々の感情の変化に敏感であることが大事だと思っています。

感情が動いた瞬間を「何でだろう」と突き詰めていくと、だんだん共通しているものが見えてくるようになります。それを言語化できればシャープになっていきます。最初はきれいな言葉に出来なくてもいいんです。たどたどしくとも言葉にできたなら、そのステートメントがしっくりくるかどうかを時折、振り返ってみると良いのではないかと思います。

忙しいと余裕がなくなりがちですが、当社では入社式で新入社員に「暇を持とう」ということを伝えています。日々の感情の変化に気づくために余白を持っておこうということです。そうしたことはぜひ、意識してほしいですね。

―感情の変化に気づくために、何か効果的な方法はあるのでしょうか

(バスマジェ)個人的なやり方ですが、「すごく腹が立つ」ということがあったときに、その理由を考えるようにしています。うれしいことは皆さん考えたり振り返ったりすると思うのですが、嫌だったことは目を背けたり、忘れがちになってしまいますよね。でも、嫌な気持ちになるのは、自分が大切にしている何かを害されているからです。それが何なのか分かればより色々な角度から自分のことが分かります。

また、自分が普段やらないことや、コンフォートゾーンの外にあることに挑戦してみることも大事だと思います。そうすると意外としっくりきたり、新たな体験を通じて新しい面が見えてくるものです。反対にしっくりこないときは、自分の好きなことや、大事にしていることとどのような点でマッチしないのかを考えるきっかけにできます。

嫌なことや腹が立つことを考えることはネガティブなことですし、疲れることではありますが、「怒り」はその人の価値観に近いものがあると思っています。ネガティブなことがあった時に、怒っちゃいけない、泣いちゃいけないという風に思う人もいるかもしれませんが、自分の中にそうした感情があると気づき、受け止めることは大事なことだと思います。

―小野さんはいかがでしょうか

(小野)パーパスを見つけなければとなっても、すぐに見つけられる人はいないと思います。ですので、バスマジェの言うように、まずは自分の感情に向き合ってみることだと思います。

ただ、私の場合には嫌なことや腹が立つことではなく、ワクワクすることに目を向けるようにしていますね。それはワクワクすることは小さい頃から変わらないものだと思うからです。

先ほど、ワークショップで4つの質問について考えるとお伝えしましたが、幼少期の頃についての質問がありましたよね。幼少期の頃に感じていたことを深掘りしていくと、実は今の自分に繋がっているなと思うことがありました。

私は小さい頃から、魔女や魔法使いが好きで、映画や本も魔法が出てくるものばかりに触れていました。だから、私の今のパーパスは、「一人ひとりが自分で持っている魔法に気づき、それを解き放つサポートをする」ということです。

私の中で、魔法には自分の強みやワクワクすること、パッションなど色々な意味を含めていて、そうしたことにみんなが気づける社会を実現したいなと思っています。

これまでの人生で他人から嫌がらせを受けたことがあったのですが、もしみんなが自分の魔法に気づいていれば、他人に嫌がらせをする暇などなく、自身の魔法で自分を幸せにできるものだと思うんです。そうした経験もあり、このパーパスを立てました。

小さな頃に感じたワクワクや好きだったことを深堀りすると、大事にしている価値観に繋がっていることが多いんです。例えば子どもの頃魚釣りが好きだった人がいたとしましょう。たくさん魚を釣ることが楽しかったのか、これまで釣ったことのない魚を釣ることが面白かったのか、魚釣りの方法を他の子に教えてあげることが好きだったのか。それぞれ大事にしている価値観は違いますよね。それを見つめることに意味があります。

「パーパス」ということを意識しすぎずに、まずは幼少期から今にかけて、いつ、何にワクワクしたのかといったことを振り返って、それを軸に自分のストーリーを作ってみることから始めてみてはどうでしょうか。
 








ユニリーバ
毎日190カ国で35億人が製品を使う世界最大級の消費財メーカー。代表的なブランドはラックス、ダヴ、AXE、クリアなど。「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパスのもと、成長戦略「ユニリーバ・コンパス」を推進。「地球の健康」「人々の健康、自信、ウェルビーイング」「より公正で、より社会的にインクルーシブな世界」の3つの分野で変化を加速させながら業績を上げ、サステナブルなビジネスのグローバルリーダーとなることを目指している。日本法人は1964年設立。100%再生可能エネルギーへの切替や柔軟な働き方「WAA」などで知られる。

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.

1991年12月生まれ。
新卒で大手新聞社に入社。記者として取材・記事の執筆を経験後、Webサービスを手掛ける企業に転職。約20名のメンバーのマネジメントの傍ら、Webサイトの開発・サイトの集客プロモーション・取材やライティングを幅広く担当。20代の働き方研究所では、企業へのインタビュー取材・取材記事執筆を担っている。
#カスタマーサクセス #コンテンツディレクション #イベントプロモーション #仕事終わりの晩酌が日課

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