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2022.08.24INTERVIEW

自らの手で、生き方やキャリアを選択し、イノベーションを起こす。SOMPOホールディングスの「MYパーパス」の取り組みに迫る

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.
SOMPOホールディングス株式会社
人事部
課長代理 田代 雄大(たしろ ゆうた)様
主任   湯田 菜都美(ゆだ なつみ)様


国内損害保険事業を起点に、海外保険事業、国内生命保険事業、介護・シニア事業、デジタル事業と5つの事業を展開するSOMPOホールディングス。28ヵ国の国と地域で事業を展開し、社員数は75,000人に上ります。サステナブルな成長を実現するために2021年5月には同社のパーパス、「“安心・安全・健康のテーマパーク” により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」を経営戦略の根幹に置きました。そして、そのパーパスの実現に取り組む主役は社員一人ひとりであるという考えのもと、人的資本経営の一環として「MYパーパス」を軸とした施策を展開しています。

今回、お話を伺った田代さんと湯田さんは、人事部として「MYパーパス」の取り組みを推進されています。そもそも「MYパーパス」とは何か、それを見つけることによる意義とは何か、そしてお二人が掲げる「MYパーパス」とは何か―。様々なお話をお伺いしました。

パーパスの実現に取り組む社員を後押しする二人の人事担当者

―本日はよろしくお願いします。まずはお二人のこれまでのご経歴について教えていただけますでしょうか

(田代)事業の壮大さ、ダイナミックな仕事に魅力を感じ、新卒で国内の海運会社に入社しました。最初の5年は営業職に従事しておりましたが、「10年3部署ローテーション」の育成方針のもと、その後は経理、人事と担当するようになりました。

3部署目となった人事部がキャリアの転機となりました。当時、その会社では働き方改革が推進されていたのですが、その活動に携わる中で、人事部を起点に会社を変えることの手応えや面白さを感じ、勤続10年という節目のタイミングで、人事のプロになろうと決めました。

次のステップとしては、外資系のコンサルティングファームを選択しました。事業会社の人事部とコンサルティングファームとで悩みましたが、人事コンサルとしてより多くの企業課題を見たほうが自分の成長に繋がると思い、決断しました。また、面接で出会った当時の上司が人間的に素晴らしい方で、この人の下で働いてみたいという直感も働いてのことでしたね。

転職1年目は、コンサルタントとしての基本所作ができていなかったので苦労しましたが、周囲のサポートもあり徐々に手応えを掴めるようになっていきました。こうして順調にキャリアを歩むことができていたのですが、人事系のプロジェクトにフォーカスできる別のコンサルティングファームからお声掛けいただいたことをきっかけに、2度目の転職を決意しました。

―そこからSOMPOホールディングスへ転職されたのですか

(田代)はい。刺激に溢れた日々を過ごすことが出来ていたのですが、この時に頭蓋骨腫瘍が見つかり、大きな手術を受けることになりました。大げさに聞こえるかもしれませんが、その時は死も覚悟しました。そのタイミングで、改めて自分の人生の棚卸しを行い、自分のキャリアの中で何を実現していきたいのか?を真剣に考えました。その時に頭に浮かんだのが、1社目の人事部で経験した働き方改革だったのです。

そこからもう一度現場に戻り、事業会社の人事部としてキャリアを積みたいと考えました。とはいえ、すぐに転職できるわけでもないので、アンテナを高く張りつつ、自分の心が動くような取り組みをしている会社がないか1年ほど慎重に見極めていきました。そうした中でたまたまSOMPOを見つけました。

―なぜSOMPOホールディングスに関心を持たれたのでしょうか

(田代)中期経営計画の中で働き方改革を推進しているということを知り、そこからCHRO(最高人事責任者)である原のインタビュー記事をはじめ、様々な情報を見ていく中で、企業文化を変革していこうとする本気度が伝わってきたのです。

そしてパーパスです。会社として、パーパスを掲げ経営の核としていることもそうですが、個のパーパスにフォーカスした取り組みをしていることが、非常に斬新だと感じました。

通常、階層型組織を採用している企業は、トップダウンで方向を定め、そこに向かって皆で頑張っていこうと号令をかけることが自然であり、これまでの在り方であったように思います。

一方でSOMPOグループの場合には「MYパーパス」を軸に考え、社員一人ひとりがそれに基づいて働くことを目指しています。一見すると、組織がバラバラになってしまうように見えるかもしれませんが、個のパーパスと会社のパーパスとの一致点を見つけることで方向性を定めるという、新しいアプローチが面白いと感じました。

―湯田さんはいかがでしょうか

(湯田)新卒で生命保険会社に入社しました。営業職として職域で個人のお客様への保険の提案業務をしておりました。その後、3年ほどして一念発起し日本興亜生命保険(現在のSOMPOひまわり生命保険)に転職しました。

転職してから10年半、保険金サービス部という保険金・給付金のお支払いを担当する部署に在籍していました。ここではいわゆる「事実確認」という保険金・給付金等の請求に際し医療機関等へ調査を行い、その内容に基づいて保険金・給付金等のお支払い判断をする業務を担当していました。時にはご契約の際に正しく健康状態等の告知をいただけなかった等によりお支払いをお断りするという判断をする必要もありました。保険金の請求にあたっては、万が一にも不正があってはいけませんので厳しくジャッジする必要がある責任のある仕事でした。

また、一つ一つ事案の内容は異なりますので、医療や法律はもちろん、保険の約款を読み解く知識・経験がなければなりませんので、大変な面もありましたが、難しい事案に対応するほど成長を実感することができましたね。

その後、部内異動で保険金サービス部内の事務の企画に関わるポジションに移りました。保険金の支払い内容が本当に正しいのかチェックをする管理業務の他、新商品を開発する際の保険金サービス部側の事務対応のルールの構築、システム開発に関するユーザー対応などを包括して担当していきました。

そして昨年10月からSOMPOホールディングスの人事部に出向し、パーパス浸透の施策を担当しています。

自らを突き動かすようなパッションや想い。それがMYパーパス。

―本日のテーマでもあり、お二人の話にも出てきました「MYパーパス」について、まずはどのようなものなのかを教えてください

(田代)まず、当社は1888年に日本で初めての火災保険会社として誕生しました。当時、国から認められた唯一の私設消防団である「東京火災消防組」を組織し、24時間365日体制でお客様を火災からお守りしていました。その時の「身を挺してお客様を守り抜く」という創業の志が我々の存在の原点です。

そして現在、様々な社会課題が出てくる中、お客様のニーズに応えていくために、柔軟に事業形態も変化させながら、様々な商品・サービスを提供し続けています。そのあらゆる事業の根幹にあるのが、当社のパーパスである「“安心・安全・健康のテーマパーク” により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」です。このパーパスを経営の根幹において、グループとしての持続的な成長を目指しています。

そして、SOMPOのパーパスをさらに追求していくための鍵となるのが「MYパーパス」です。MYパーパスとは「自らを突き動かすようなパッションや想い」のことを指します。「WANT(これまでの人生や仕事においてワクワクした瞬間=内発的動機)」・「MUST(解決したいと思う社会課題=社会的責務)」・「CAN(自分の経験やスキルなど運命が与えた能力=保有能力)」の三つが重なったものが、自らを突き動かす「MYパーパス」と定義しています。

そして、社員一人ひとりがこの「MYパーパス」と「SOMPOのパーパス」を重ね合わせることができれば、SOMPOのパーパスが自分事化されパーパスドリブンな経営ができると考えています。

―「MYパーパス」を追求する取り組みをしようと思われた背景に何があったのかお聞かせください

(田代)そもそもはSOMPOがパーパスを定めたところから始まります。将来が予測困難な時代において企業が持続的成長を実現するには、新たな社会的価値を創出し続けることが必要です。この前提に立った場合、企業はパーパス実現に根ざした成長曲線を描くことが重要だと考えます。パーパスという存在があれば、あらゆる環境の変化や迷いが生じた際の、拠り所となり、自分たちのやるべきことに立ち返ることができます。

(湯田)会社だけではなく個のパーパスを追求する必要があるというのは、会社主導ではなく自分主導であって欲しいという想いからです。一人ひとりの想いや能力を発揮できるようになれば、思いもよらない発見があり、そこからイノベーションが起こると考えています。個人のパーパスの追求を後押しすることで、結果として会社の成長に繋がっていくということです。

―MYパーパスを追求して、どんな人材を育成したいと考えているのでしょうか

(田代)MYパーパスの追求をベースに、「ミッション・ドリブン(使命感とやりがいを感じ、当事者意識を持って働く)」「プロフェッショナリズム(高い専門性と倫理観に基づき、自律的に行動し、結果に繋げる)」「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の重要性を理解し、新たな価値創造に結び付ける)」の3つのコア・バリューを有した人材集団の実現を目指しています。

この実現のためには、働き方への意識を抜本的に変えることが必要だと考えています。従来の働き方では、会社の中に自分がいて、会社が決めたキャリアに乗るという考え方が一般的であったと思うのですが、これからの時代はそうではありません。「自分の人生の中に会社がある」という意識にパラダイムシフトしていかなければなりませんし、当社ではグループCEO自らが率先してこの考えを社員に発信しています。
 
 

体系的な施策でMYパーパスの取り組みをグループ全体へ浸透

―パーパスの浸透のためにどのような取り組みをされているのでしょうか 

(田代)大きく3つの施策があります。1つ目は「トップによる発信」です。グループCEOはもちろん、各事業会社の社長が自らの言葉で語りかける機会を設けています。2つ目は「現場の取り組み」です。トップが発信したからと言って、社員の意識は容易には変わりません。現場のマネージャーを対象にパーパス浸透の重要性を説きつつ、いかにMYパーパスを仕事に落とし込むのかといったテクニカルな部分を含め、研修を通じてマネジメントの在り方を変えていこうとしています。そして3つ目は「浸透の測定」です。パーパスの浸透度を、定期的に実施する 「エンゲージメントサーベイ」 を以って測定し、課題解決に向けた材料にしています。

1つ目に挙げたトップによる発信では、グループCEO自らが、SOMPOのパーパスの意義について、継続的に発信する場として「タウンホールミーティング」を実施しています。タウンホールミーティングは、オンラインで開催され、「MYパーパス・SOMPOのパーパスとは何か?」 をテーマに、グループ横断でこれまで計7回、約1万人の社員が参加しました。

ミーティングにおいては、グループCEOが自らのMYパーパスとSOMPOのパーパスを語ります。各事業部門から選ばれた社員たちも、それぞれのMYパーパスを皆の前で披露し、グループCEOとの対話を通じて、視聴している多くの社員が、MYパーパスとSOMPOのパーパスを重ね合わせることへの理解を深めています。今後は海外のグループ会社に在籍する社員を対象とした「グローバルタウンホールミーティング」も展開していく予定です。

―タウンホールミーティングに参加された従業員の方の反応はどのようなものだったのでしょうか

(田代)9割以上がポジティブな反応でした。中には「会社が自分の人生について真剣に考えてくれていて良い意味で衝撃を受けた」という声もありました。私たちもこうした反応を見て手応えを感じています。

―2つ目に挙げて頂いた「現場の取り組み」について、具体的にはどんなことをされているのでしょうか

(湯田)現場では「MYパーパス1on1」という取り組みを実施しています。トップからのメッセージと、現場の社員一人ひとりのパーパスを繋ぐ接点を見つけることが現場のマネージャーの役割と考えており、そのための施策です。

プロのコーチの指導の下、1on1に必要なコーチング技術を身に着けた上で、メンバーと1on1で対話していきます。定期的に実施をする中で上司と部下のMYパーパスを共有し合い、自分の仕事にどのように落とし込むことができるかを探っていきます。それによって一人ひとりがMYパーパスに則って何をしたいのかということが明確になり、自律的な働き方を実現できると考えています。

昨年であれば、例えば部長向けに1回90分×4回の研修プログラムを実施しました。マネジメントを担う側の社員が自分のMYパーパスを見つけることから始まり、その上で部下のMYパーパスも一緒に見つけられるよう、アクションラーニング型の研修を実施しています。

MYパーパスは作成して終わりということではありません。あくまでもそれはスタート地点であって、対話の中で大事にしていることは、将来どんなことにチャレンジしたいのかということを見つけ、その強い想いに基づいたイノベーションを組織全体で起こしていくことにあります。

―対話の中でチャレンジを引き出すとのことですが、どのような方法で引き出すことができるのでしょう

(湯田)一連の対話の流れを「ダイアログ・フロー」と呼んでいますが、過去の原体験(MYストーリー)から、MYパーパスを見つけていきます。MYパーパスが見つかると、未来のありたい姿を描くことができ、そのありたい姿になるためには、どんなチャレンジをしたら良いのかということを対話で見つけ、新たな価値創造に結び付けていきます。

こうした会話をグループ全体で取り組みことによって、一人ひとりがMYパーパスを認め合うことになり、ダイバーシティ&インクルージョンの実現にも繋がっていきます。

―多くの方が働かれている中で、お互いのMYパーパスを共有する機会としてはどのような場を設けているのでしょうか

(湯田)MYパーパスワークショップや共有会、社内SNSを活用して実施しています。先ほど、上司と部下による1on1の取り組みをご紹介しましたが、これは「縦」の取り組みで、ワークショップはグループ横断型の「横」の取り組みとなります。

タウンホールミーティングに参加し、自分もMYパーパスをつくってみたいと思った方向けに、昨年の6月以降6回開催し、約1,000名の社員が参加しています。内容としてはMYパーパスの作り方に関しての講義に加え、既にMYパーパスをつくった10名のファシリテーターと共に、自分の「WANT」「MUST」「CAN」が何かを語り合っていただき、MYパーパスを見つけ出していくというものです。

ワークショップはMYパーパスをつくることを体験する入門編のような位置づけで、その後、ファシリテーターを中心に、自主的な共有会を開催しています。共有会ではMYパーパスを語りあう場です。そしてその後、任意で作成したMYパーパスを社内SNSで共有するといったこともしています。

―現場レベルでも様々な取り組みをされているのですね。タウンホールミーティング同様に、参加された方からはポジティブな意見が上がったのではないでしょうか

(湯田)はい。MYパーパス1on1に参加した方のアンケートでは、95%が満足と回答していました。また、90%超が自分自身に新たな気づきを得たとも言っています。一方で、人数の多い部署などでは一人ひとりと向き合う時間をいかに創り出すかといった課題もあり、改善も続けながらMYパーパス施策を浸透させていっています。

―湯田さんは現場レベルでの研修をご担当されているとのことですが、実際に受講者の方と接したことでの気づきなどはありますか

(湯田)私が担当している研修は課長職など管理職を対象としています。一人ひとりがMYパーパスをもっているとは思いますが、まだ顕在化していない状態だと思っています。MYパーパスが明確にならないまま会社員人生を過ごし、会社のことや仕事のことを第一に考えてこられた方にとって、MYパーパスを見つけることは、自分のこれまでの常識を変えるような作業でもあるので、時には大変だと思う方もいらっしゃるようです。

前提として、私たちのグループもかつては自分のキャリアや、人生を通じて実現したいことに向き合う社員が少なかったんです。それは新卒一括採用で採用活動し、ジョブローテーションなどを通して、会社が一人ひとりに役割を与えていたためです。社員も与えられた仕事を頑張ることに徹してきたわけですが、自ら課題を見つけてそれを解決していくように意識が変わらないとイノベーションは生まれません。先ほどお話にもありましたが、「会社の中の自分」から「自分の中の会社や仕事」に意識を変えていかなければならないことですので、自分の人生をより豊かにしていくためにも必要な取り組みだと思っています。

―長く働いてこられた方の中には戸惑いもみられるということですね

(湯田)そうですね。今まで考えたこともなかったという声が圧倒的に多いです。中には若い社員と接する中で「働く」ことへの考え方の違いを、日頃から肌で感じているという人もいますね。ただ、ほとんど全ての社員がMYパーパスを見つけていく過程で大きく意識が転換していき、研修の始めと終わりで顔つきが全く変わっていくので、やって良かったなと思います。

また、研修に参加いただいた方同士で共有をしたり、議論をしたりということもあり、人と話すことで新たな気づきを得るということも研修の目的の一つとしています。最初は戸惑いが大きかったとしても、少しずつ前向きに取り組むことができるようになる方もいらっしゃるようです。

―ベテラン層には戸惑いもあるとのことですが、例えば若い方はまた違った反応であったりするのでしょうか

(湯田)若い社員のお話ではありませんが、ある女性の考え方は印象的でした。女性はライフステージによって「働く」ことに対する意識は全く異なります。とある女性の管理職が「私は今までずっと、自分のパーパスに従ってきた。自分の人生の中のどこに仕事を入れることができるのかをずっと考えてきたわけで、ようやく時代が追い付いてきた」と話されていたんです。

その話を聞いて、確かに自分自身の就職活動を振り返った時に、ワークライフバランスを保つことができる会社を探していたと思い出しました。長い社会人生活でライフステージに合わせて働き続けることを意識してのことでしたが、この女性管理職と、根底では同じような意識をもっていたのだと思います。

(田代)若い社員がMYパーパスを見つけるプロセスをすんなり受け入れられるというのは、個人的な意見ではありますが、世の中や社会のあり方が変化してきているからだと考えています。

例えば、昔だったら偉くなってお金持ちになりたいと思う人が多かったように思います。ですが、今はモノが溢れ、大量の情報にアクセスできる時代です。そもそもの根幹である時代背景に違いがあるように思っています。経済的な豊かさだけでなく、自身の価値観を大事に生きていきたいと感じている人が増えてきているからこそ、MYパーパスを見つけることをすんなりと受け入れられるのだと思いますね。

ただ、これは若い人に限った話ではなく、これからの社会全体に言えることかもしれません。企業が単に利益を追求するという時代ではなくなりつつあると思います。時代の先を見据えた価値を世の中に提供し、その価値に共感してくれる人々を増やしていくことで利益に繋げていく。そんなビジネスモデルが浸透しつつあります。世の中全体として、お金ではなく価値観に重きが置かれるようになってきたのではないかと感じていますね。
 


―田代さんはMYパーパスの浸透や、エンゲージメントを高める施策に取り組まれていますが、仕事における意識やパフォーマンスの変化などを感じる瞬間はありますか

(田代)私が所属している人事部でもMYパーパスを共有しており、実際にそれに根差して働いている人は、主体性をもって働くことができていると思います。会社のための仕事ということだけではなく、仕事を通じてどのように世の中を変えていきたいかといった熱い想いを根底に持ち、それに突き動かされている印象です。

事実、自分自身がMYパーパスに突き動かされて働くことができており、一人ひとりがMYパーパスを見つけることで、本当の意味で自分の人生を自分事化することができるようになると思っています。自分事化できれば、よりハッピーに働くことができ、そのハッピーは世の中に還元され、会社の利益にも繋がっていくという正のサイクルを描くことができると思っています。

―一方で、MYパーパスを意識し続けることや、それを仕事に生かすことは難しさも感じてしまいますが、実際のところはいかがでしょうか

(湯田)確かに、MYパーパスと会社のパーパスとの重なり合いを見つけるのは簡単ではありません。一人ひとりのMYパーパスが異なるため、極端なことを言えば「お金を稼ぐこと」という人もいるかもしれません。ただ、たとえお金を稼ぐことであったとしても、お金を稼ぐためには昇進・昇格する必要があり、そして昇進・昇格したいという気持ちをなぜ持っているのかを突き詰めていけば根底には何か別のものがあります。遠回りかもしれませんが、根底に何があるのかということの気づきは対話を通じて見つけることができるものです。

(田代)MYパーパスをつくるというお話をしていましたが、そもそもMYパーパスをつくるということは、必ずしも簡単なことではないと思っています。個人的には、自分自身と向き合うなかで、徐々にMYパーパスの解像度は上がっていくものと考えています。そのため、いまのMYパーパスが仮のものであっても良いと思っています。あくまで会社は考えるきっかけや見つけ方を提供しているのであって、「自分が本当にしたいことは何か」という本質的な部分については、中長期的に自分と向き合い、追求していくものだと考えています。

また、仮にMYパーパスとSOMPOのパーパスが重なり合わないと感じたときには、MYパーパスに基づいて社外に活躍の場を求めるというのも、大切な一つの選択肢として捉えるべきだと思います。一度、外の世界を見た後に、またSOMPOに戻ってきてもらうのも大歓迎です。フラットに自分のキャリアと向き合ってほしいですね。実際に当社の社長も一度、外部での経験を積んだのちに戻ってきています。このように、会社という枠にとらわれない考え方は、MYパーパスが導入されたことによって、ますます明確になってきたという印象です。

―本当にやりたいことが一生不変であるということはなく、ライフステージに応じて変わっていくものですので、確かに中長期的に自分と向き合うことは必要ですね

(田代)その通りですね。MYパーパスが変化することは当たり前で、ライフステージ、キャリアステージに応じて変わっていくものだと思います。ですので、人生の節目できちんと自分に向き合うことが必要になると感じています。

素直な気持ちで自分の“ありたい姿”を見つけ出し、追求することで自分らしく働ける

―お二人のMYパーパスについてもぜひ教えてください

(湯田)私のMYパーパスは「知識、経験を仲間へつなぐことで現在・過去・未来の人の輪を醸し、その結果、「ありがとう」の好循環をつくる」というものです。色々な原体験の要素を紡いでつくっていきました。

中学・高校の時に合唱部に所属しており、一人ひとりの声はすごく小さなものですが、仲間と一緒になることで素晴らしい音楽を創り上げることができるという経験をしました。この経験から仲間と一緒だからこそ味わえるものがあるということに感動しました。

社会人になってからの保険金の仕事も、合唱部での発声方法についても、全てをマニュアル化することはできず、人から人へ伝えることでやり方を継承できるということがありました。先輩から学んで後輩へ伝えていくというのは、広い意味では歴史を紡いでいく作業の一環だと思っており、こうした継承作業にやりがいやワクワクを感じていました。

そして、保険金・給付金の仕事に携わっていると、大変辛い経験をされた方と接することがありますが、自分が成長することで相手に提供できる体験が大きく変わることを強く感じました。こうした相手に寄り添うということは、まさにマニュアル化の難しい部分で、先輩である私が後輩に教えることで、同じように辛い経験をされた方から「ありがとう」という言葉をいただくこともできると考えています。そうした経験から、このMYパーパスを定めました。

―田代さんはいかがでしょうか

(田代)私は「人々の人生における選択肢を一つでも多く増やしたい」というMYパーパスを掲げています。私は自分が病気になった時に「幸せとは一体何か」ということを突き詰めて考えました。幸せの定義は人それぞれですが、私の場合には「選択肢が多様であること」が幸せだと考えたのです。

幸せというと物質的な豊かさを想像しがちですが、思考や発想の多様性についても重要な要素だと思います。自分のこれまでの経験や考え方を、次世代に伝えていき、幸せになってもらいたいという想いで、このMYパーパスとしました。

―ここまでお話いただきありがとうございます。最後に、これから可能性あふれる20代の読者がMYパーパスを見つけ、自分らしく働ける会社や仕事に出会うために、どんな取り組みをしたらいいかお二人からアドバイスがあればお願いします

(田代)難しい質問ですね(笑)。一つ挙げるとすれば、自分に「素直」でいることだと思います。自分の人生なので、自分がどうありたいのかは、素直に自分に問いかけ、見つけていって欲しいと思います。

そして、それを実現するためのアクションを起こしてください。挑戦することは不安を伴いますが、勇気を持って「自分のありたい姿」を目指してください。その素直さと勇気が伴うのであれば、自分の生き方について後悔はなく、自ずと道が開けていくものだと信じています。

もちろん、自分を信じ続けるということはとても難しいことです。どんなアスリートであっても、どんなに強そうに見える人間でも、不安や迷いはつきものです。ただ、どのような時であっても、自分を信じ続けることができるか否かが、自分らしいキャリアを築く上でのキーになると思っています。

(湯田)私は人と比べないことが大事になると思います。他の人のMYパーパスを聞くと、背景にある原体験など「すごいな」と思ってしまうものです。ただ、自分には自分しか経験していないことや、そこで抱いた感情があるはずなので、人と比べるのではなく、自分がダイレクトに何を感じるのかということを意識してほしいと思っています。

全ての経験が原体験になり得ると思っており、田代さんもお話されていた「素直さが大切」ということに通ずるものですが、自分の視点や感情を大事にしてほしいですね。
 

SOMPOホールディングス株式会社
2010年4月設立。(創業の源流としては1887年に生まれた日本初の火災保険会社「東京火災」)グループとして国内損害保険事業(損害保険ジャパン)、海外保険事業(SOMPO International)、国内生命保険事業(SOMPOひまわり生命)、介護・シニア事業(SOMPOケア)、デジタル事業(SOMPO Light Vortex)の5つの事業を展開。SOMPOホールディングスのパーパス「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」に取り組む主役は社員であるという考えから、社員一人ひとりが主役となる働き方改革を進行し、MYパーパスに基づき社員が自ら人生やキャリアの選択をすることで成果を発揮できる人事制度を設計。これまでにない人的資本経営の形として注目を集めている。

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 Y.S.

1991年12月生まれ。
新卒で大手新聞社に入社。記者として取材・記事の執筆を経験後、Webサービスを手掛ける企業に転職。約20名のメンバーのマネジメントの傍ら、Webサイトの開発・サイトの集客プロモーション・取材やライティングを幅広く担当。20代の働き方研究所では、企業へのインタビュー取材・取材記事執筆を担っている。
#カスタマーサクセス #コンテンツディレクション #イベントプロモーション #仕事終わりの晩酌が日課

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