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2022.09.07INTERVIEW

「映像」によって社会を変える。日本最大級のTipsサイト「Vook」はいかにして生まれたのか。

20代の働き方研究所 研究員 H.O.
株式会社Vook 代表取締役 CEO
岡本 俊太郎(おかもと しゅんたろう)様


​​​​​株式会社Vookは動画・映像に特化した日本最大級のTipsサイト『Vookの運営をはじめ、動画編集・映像制作スクール『Vook School』、映像クリエイターに特化した人材紹介サービス「Vookキャリア」を展開することで、クリエイターの「学び・仕事・繋がり」を幅広くサポートしています。今回はこれら事業を展開する株式会社Vookの創業者、岡本俊太郎さんにお話を伺いました。10代の頃から精力的に活動を続け、起業した後も代表取締役として最前線に立ち続ける岡本さんのお話から、新しいことにチャレンジし続けるためのTipsを探ります。

サッカー選手と同じ位、大きな夢を追いかける

―若くして起業された岡本さんですが、どのような学生生活を過ごされていたのでしょうか

中学、高校生の頃はサッカーに明け暮れるスポーツ少年でした。中でも通っていた高校は全国大会にも出場するような有名校で、将来の夢は幼いころからずっと「サッカー選手」でした。

ただ、高校生にもなると進路を考える機会も多くなり、段々と自分には「サッカー選手」という夢が難しいこともわかるようになっていきました。そこで、サッカー選手は難しいけれど、それと同じくらい大きな夢を持ちたいと思い、「起業」という目標を持つようになったんです。

そこからはビジネス・経済情報を発信するラジオ番組を聞くようになり、ラジオリスナー同士でビジネスアイディアについて語り合うBOOT CAMPに参加するなど、行動にも移すようになっていきました。

私が高校生だった2000年代は世界的なインターネットバブルが起きていて、日本からも「mixi」や「楽天」といったメガベンチャーが出てきた時代です。振り返れば、タイミングとして世間が抱く「起業」ということのスケールやイメージが変わりつつあったことも、起業家を目指した背景にあると思います。

―大学入学後すぐに学生団体を立ち上げられますが、設立までの経緯を教えてください

きっかけは「iPod touchのCMに、イギリスの学生が自主制作した映像が採用された」というニュースを見たことでした。同世代が作った映像が、アップルのCMに起用されたことに驚きましたし、自分は映像を作れないけど、若手のクリエイターをフォローして、世の中に送り出す側にはなれるんじゃないかと、ビジネスアイディアが浮かんだ瞬間でもありました。

いくつかのプレゼン大会に出場し、優勝・入賞も経験したことで手ごたえも感じており、学生団体adoir(アドワール)を立ち上げました。

―学生団体ではどのような活動を行っていたのでしょうか

主に「学生のためのCMコンテスト」の運営を行っていました。
応募者を募るためにWebサイトを作り、スポンサーになっていただける企業を探して、審査員を引き受けていただけるクリエイターの方にお声がけをし、授賞式を行う会場を借りたりと、がむしゃらになんでもやりました。のめり込み過ぎて、留年もしました(笑)。

中でもメインの活動となったのは「my Japan Award」という、日本の魅力、日本の社会問題など様々なテーマで学生にCMを作ってもらうコンテストです。

全8回の開催の中で、経済産業省や外務省、観光庁に協力いただけるようになったり、クリエイターのためのサマーキャンプを地方自治体と一緒に開催したりと、非常に多くの経験をさせていただきました。そのおかげもあって、最後の年である2017年には大手広告代理店のアートディレクターや、日本を代表するクリエイターなど、日本最高峰の審査員をお招きし、全国から200作品を集める非常に大きなコンテストを開催することができました。
 

多くのニーズを感じながらも、大きな事業転換を決断

―大学を卒業後、学生団体と同名の「株式会社adoir」を起業されますが、こちらも設立までの経緯を教えてください

起業したきっかけは「my Japan Award」を通して多くの実績を残すことができたことで、映像制作依頼をいただいたことでした。お仕事をさせていただく上で法人化する必要があったため、「my Japan Award」の受賞者であるクリエイターと一緒に、株式会社adoir(現:株式会社Vook)を2012年に起業したという流れです。

―現在のVookとは事業内容が異なりますね。制作会社としてはどのような仕事をしていたのでしょうか

地方自治体から受託した地域のCMや、企業の広報動画などを制作していました。今では考えられませんが、当時は「映像を作る」というと映画やCMといった大きなプロジェクトが当たり前でした。もっと手軽に映像を制作し、使用したいといったニーズは自分たちが思っていた以上に多く、官公庁や大手企業など非常に幅広いクライアントと仕事をさせていただきました。

徐々に現在のように様々なシーンで映像が使われるようになっていき、ありがたいことに2015年には受けきれないほどの依頼をいただくようになりました。ただ、その年のある時期を境に、事業転換を決断し、映像制作の仕事は全てお断りするようになりました。

―順調に事業を拡大していくタイミングだったように思えますが、なぜそのような判断をされたのでしょうか

2014年に携わった総合電機メーカーさんのCM制作プロジェクトで、映像制作の本場ハリウッドに行ったことが大きなきっかけになっています。ハリウッドの映像制作技術やスキルが高いのはもちろんなのですが、「教育」や「働く環境」に大きな差があることにとてもショックを受けたんです。

日本の映像制作現場には足りていないものが沢山ある。そんな現状を目の当たりにして、変えていくことの意義や、必要性を感じ、自分たちが「作る側」だった経験を踏まえたうえで、日本の映像制作を変えていく存在になりたいと思うようになりました。

そのために、映像制作の仕事を一旦全てお断りして、新しいビジネスアイディアを考え続けました。振り返ってみると、中には結構面白いアイディアもあって、「簡単にアフレコして動画が作れるアプリ」や「料理キットと一緒にレシピ動画を送るサービス」など、今の時代には当たり前になっているようなサービスを開発していた時期もありました。

その後、2016年に「映像に関わる人と情報のプラットフォーム」を目指して「Vook」というWebメディアをオープンし、現在に至ります。

―2015年から「Vook」立ち上げまでの約3年間を、どうやって乗り越えられたのでしょうか

背景として、高校生の頃に「起業」という目標を持った時から「社会起業家」に興味があったことが、自分のモチベーションを高く保てた要因だと思います。大学のコースに「ソーシャルイノベーションコース」が新設されるなど、社会問題への関心が急速に高まっている時代でもありました。

そしてもう一つ、当時“20代後半”ということに焦りがあったことも大きな要因だと思います。沢山の後輩たちが自分のように20代前半で起業していく中、新しく起業するほどの事業転換をするには、ギリギリの年齢だと感じていました。起業家の中ではすでにかなり年上でしたからね。

Vookは日本最大級の「動画編集・映像制作Tipsサイト」へ

―その後、どのようにVookの事業を拡大させていったのでしょうか

最初は、収益モデルを確立させるのにとても苦戦しました。中でも苦戦したのは「提案スタイル」です。それまで行っていた「映像制作」の場合、撮影や編集の技術など「クリエイティブ」を提供すればよかったため、提案に難しいロジックが必要なかったんです。

しかし「Vook」はプロダクトをクライアントの広報・営業の施策に導入してもらうという、全く違うカタチの提案が必要でした。「Vookに記事や広告を掲載するメリットとは?」を自分に問い、提案できるようになるまで、少し時間がかかりました(笑)。その時は、一般的な営業職としての経験が無い自分のキャリアを悔みましたね。

徐々にお仕事を貰えるようになったのは、カメラメーカーとの信頼関係があったからでした。Vookを始める前の2017年、カメラメーカーや地方自治体と一緒に、次世代の映像クリエイターを育てるための合宿イベント「Next Filmmaker’s Summit」というものを開催したことがあったんです。そこでありがたいことに「これからの映像業界をより良いものにしていきたい」という考えに共感していただくことができ、メーカーさんと良い関係を構築することが出来ていたおかげで、スポンサーとして広告や記事を掲載していただけるようになり、少しずつ収益化ができるようになりました。

現在Vookはメディアとしてだけではなく、ECサイトや人材のマッチングサービス、スクール運営や、クリエイターと企業が集まるイベントなんかも開催をしています。

―中でも、2021年にスタートさせた「Vook School」は非常に人気がありますよね。先日開催された「VIDEOGRAPHERSTOKYO 2022」でも非常の多くの方がブースに集まっていました

スクール事業はVook立ち上げ当初から構想があったため、かなり時間をかけてしっかり作ったプロダクトです。一般の受講者さんからも多くのお問い合わせをいただいていますし、映像制作会社の研修としてもご利用いただいています。思った以上に企業からのニーズが高くて、少しびっくりしました。

ちょうど第1弾として開講した「ビデオグラファーコース」の1期生から卒業者が出たタイミングですが、キャリア支援事業との連携も開始していて、着実に事業として軌道に乗ってきたように思います。先日オンライン上で学べる「モーショングラフィックコース」も開講しており、今後もニーズに合わせてその他のコースも用意していく予定です。
―今後、Vookを通してどのような世の中にしていきたいと考えていますか

私たちはVookを通して「映像の力で社会を動かしたい」と考えています。これは、“映像業界を変える”という意味でもありますし、映像によって“社会を変える”という意味でもあります。

映像には人を動かす力を持っています。例えば、今この瞬間にも起きている地球の裏側の社会問題を知ることも、映像で見た方がより深く理解することができるように、共感メディアとして非常に大きな影響を与えることができるツールです。

撮影も、編集も、視聴も、テクノロジーの発展によって手軽になっていますから、もっと沢山の人が今以上に映像でコミュニケーションを取るようになるかもしれません。そうやって、映像の力で社会が変わっていく時代に、Vookを通して適切な情報を多くの人に届けていければと思います。

そして「映像」がより当たり前になり、社会に対して大きな影響力を持つようになれば、「映像」という素晴らしいものを取り扱う「環境」も良くなっていくと思っています。ニュースなどで度々目にしますが、現在の映像業界にはハラスメントがまだ残っています。Vook schoolで学んだ次世代の担い手を良い環境に輩出していくために、キャリア事業を通して企業に働きかけていきたいと考えています。

―最後に、岡本さんから読者にメッセージをお願いします

私は、起業するかしないかに限らず、20代後半は焦った方が良いタイミングだと思っています。「若いから」と言えなくなってきていることを、ご自身でも感じることがあるのではないでしょうか。私自身も焦りを感じて事業転換を行いましたし、結果的にそのチャレンジが無ければ、今の自分はいませんでした。

私は普通の社会人というものを経験しておらず、それで苦労したこともありました。ただそれでも、起業したいなら更に急いだ方がいいと思っています。30代に描けるキャリアの伸びしろが変わる、大事な時期だと考えて頑張ってみてください。応援しています。
 
株式会社Vook
2012年1月設立。映像制作Tipsサイト「Vook」を2016年1月にオープンさせ、現在は映像・動画クリエイターが閲覧する日本最大級のサービスとなっている。2020年12月には社名を現在の株式会社Vookへ変更し、「映像クリエイターを無敵にする。」という新ビジョンの元、事業拡大を続けている。

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 H.O.

1994年8月生まれ。
新卒で老舗写真プロラボに入社。フィルムから写真のプリント行うニッチな仕事を経験後、自身の転職活動を通して気づいた想いを仕事にしたいと思い、人材サービス業へ転職。
20代の働き方研究所では、一人で取材も撮影も行うライターとして記事執筆を行っている。
#HR Tech #ジム通い(3ヵ月目) #メタバース

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