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2023.06.28INTERVIEW

移動スーパー「とくし丸」の挑戦。これまでにないビジネスモデルで、買い物難民という社会課題へ立ち向かう。

20代の働き方研究所 研究員 T.I.
株式会社とくし丸
SV部 販売パートナーサポートセクション
マネージャー
杉山 敬佑(すぎやま けいすけ)様


少子高齢化や都市部への人口集中が進む中、大型スーパーの台頭により地元の商店も数を減らしています。その結果、食料品や日用品を購入するために毎回タクシーを利用せざるを得なかったり、危険を承知で自ら自動車を運転するお年寄りも。こうしたいわゆる「買い物難民(買い物困難者)」という社会課題に立ち向かうのが、今回お話を伺った株式会社とくし丸の杉山さん。学生時代、バングラディシュでボランティアをした経験から食糧問題に興味を持ち、新卒では大手農業法人へ。生産者として農業に関わり、次のステージとして、より「食」の問題へアプローチするために株式会社とくし丸へ入社されました。杉山さんのお話から、ビジネスで社会課題を解決するとはどういうことなのか、そしてキャリアを選択する上で「社会課題の解決」を軸とする魅力が見えてきました。

移動スーパー「とくし丸」とは
スーパーの超大型化や郊外化によって近所のスーパーが撤退しアクセスが悪くなったり、高齢のため足腰が弱り、日常の買い物が不自由になってしまう「買い物難民」という社会課題を解決するために活動する移動スーパー事業。地域スーパーと提携し、商品提供を受けた販売パートナーが軽トラックでお客さまの玄関先まで出向くことで、現物を「見て・触って・感じて・選んで」といった買い物インフラを提供。2023年6月現在、全国で1100台以上が稼働し、約17万人が利用しています。

「食」の課題を解決するために

―現在はとくし丸で活躍されていますが、新卒時には農業法人に入社し、キャベツやネギなどを作る農業生産者を経験されたと伺っております。就職先として農業法人を選んだのには、どんな思いがあったのでしょうか

「食」に興味を持ったきっかけとしては、やはり学生時代にボランティアで行ったバングラディシュでの経験が挙げられます。日本の4割ほどの国土に約1億6千万人が住み、雨期には国土の4分の1が水没することもある環境の中、食糧を確保することは並大抵のことではありません。世界的に食糧問題は極めて重要な問題だと改めて認識しました。

帰国後に改めて日本の「食」の問題について考えたとき、農業生産人口の減少の煽りを受けてこのまま農業が縮小し続ければ、いずれ食べるものがなくなるのではないかと危機感を覚えるように。こうした日本の食料問題を解決するために、「食」の根幹をなす農業生産者としての道を進むことを決意しました。

実際に農業に携わってみると、日本の農業生産者は減っているものの、より効率的に生産を行うことができるようになっており、日本人が飢餓に苦しむような事態にはならないという実状が見えてきました。一方で、現在日本が直面している「食」の問題は、単純に生産量を増やすことで解決できるものではないとも気づくことができました。

また、農業は最初にいかに完璧な計画が立てられるかが重要です。一度苗を植えてしまうと、そこから修正することが難しく、農薬を撒くなどの対処療法的な微修正しかできません。農業生産者としての経験で、この「計画を立てる」という部分が自分は得意なんだと気づけたことが、現在の仕事に繋がっています。

―その気づきを経て、とくし丸へ転職されたんですね

前職の農業法人は大手小売企業のグループ会社で、作ったものを親会社へ卸すところまでしか経験ができず、どのようにして消費者の元に届くのか想像がつきませんでした。生産スキルしか持たない自分が生涯活躍し続けるために、生産者としての経験で気づいた「計画を立てる」という自分の強みを活かしつつ、より広い知識や技術を身につけたいという思いもあり、転職活動を始めました。

転職活動の軸として、「食」に関わる社会課題を解決する企業で、且つ変化をいとわないところがいいなと考えていました。そこで出会ったのが「とくし丸」の親会社で、食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地です。当時から食品業界の中では新しい取り組みを推進するリーディングカンパニーでした。

「とくし丸」との出会いは選考の中で紹介してもらったことです。「とくし丸」が掲げる「買い物難民という社会課題をビジネスを通じて解消したい」というミッションにとても共感しました。高校時代に一緒に暮らしていた祖母が足腰を悪くし、買い物にいけない時期があり、「買い物難民」という社会課題を身近に感じていたからです。移動スーパー「とくし丸」が自宅付近まで来てくれることで、救われる人が多くいることが容易に想像できました。

ビジネスで社会課題を解決する

―「とくし丸」の買い物難民という社会課題を解決するビジネスとはどういったものなのでしょうか

「お客さま」と「地域スーパー」、「販売パートナー」、そして「とくし丸」本部の関係で成り立つBtoBtoBtoCのビジネスです。とくし丸は日々の買い物に困っているお客さまへ商品を届けたいと考える地域スーパーと契約を結びます。地域スーパーは販売パートナーに商品を提供して移動販売を行ってもらい、商品をお客さまの元へと届けるのです。



買い物というのは、多くの人にとって楽しい時間です。店内を見て回って、その日の気分で食べたいものを自ら選んで、時には店員やたまたま会ったご近所さんとの交流を楽しむこともできます。こうした楽しみを買い物にお困りの方々へ届ける方法はないか、そして関わる全員が幸せになる方法はないか、考えた末に創り出されたのがこのビジネスモデルです。

また、「買い物難民」を解決することをミッションとして掲げるとくし丸ですが、販売パートナーは週に2回お客さまと顔を合わせるため、地域の「見守り隊」の役割も担います。例えば、販売パートナーが元気のないお客さまに気づき、病院の受診を勧めたことで病気の早期発見に繋がったり、各地の自治体や警察署と共に特殊詐欺被害防止の協力も行っています。

―杉山さんは「とくし丸」でどんなお仕事をされているのでしょうか

株式会社とくし丸と141社のスーパー、個人事業主となる販売パートナー、そして約17万人のお客さまの4者が関わりあう事業を展開する中で、私はSV(スーパーバイザー)として働いています。全国各地の現場に行き、仕事環境や業務フローの改善、ベストプラクティスの共有を行うことで、お客さまの買い物体験を向上させる仕事ですね。

販売パートナーにはそれぞれ様々なバックボーンがあり、食の知識や小売りの知識が無い人もたくさんいます。私たちSVはこうした販売パートナーに寄り添い、時には商品の陳列などの作業を一緒に行うことで、お客さまの買い物体験の向上と、販売パートナーのモチベーションアップにつなげています。

また、一人ひとりの販売パートナーへのサポートも行いつつ、もっと広い視点で、各パートナーに共通する課題を解決するような施策も講じています。販売パートナーに対して、より販売促進につながるようなイベント施策を提案するといったことをしています。

とある販売パートナーさんは「日常会話はできるけど、どうやって商品の提案をしたらいいか分からない」という悩みを抱えていました。そこで、我々が考えた「レシピ」や「催事」を用いた接客提案を伝授しました。結果的に、販売パートナーさんから「お客さまから『こないだのレシピ美味しかった!』とか『イベントが楽しい!』といった感想がもらえて嬉しい。1日の売上が5000円もあがったよ!」という声をもらったこともありました。

ただし、販売パートナーはそれぞれ違う環境で販売を行っているため、私たちの施策がどの現場にも適しているかはわかりません。販売パートナーの中で、施策を実施しなかった方がいた場合に、何が原因でできなかったのか、どうなればもっと良くなるのかを分析することも仕事の一つです。



―この事業をマネジメントする立場として、どんなことを意識されていますか

販売パートナーの現場での頑張りはもちろん大切ですが、任せきりになってしまうと販売に関するノウハウが属人的になってしまいます。そこで、ノウハウを体系化できる仕組みを作り、すべての販売パートナーから見える形で残していくことを重視しています。

こうして体系化されたノウハウは、これまで小売りの経験がない方にとって教科書的な役割を果たすことはもちろん、独自のやり方を確立している方にとっても、さらなる買い物体験の向上を目指す際や、業務を遂行する中でつまずいてしまった時に立ち返るべきものとして使っていただいています。

ベースとなる知識やノウハウを共有できるようになったことで、各現場の関係者の間で売上やお客さまの買い物体験についての分析や対策が行いやすくなってきていると感じています。

―ビジネスで社会課題を解決する面白さとは、どういうところにあるのでしょうか

ビジネスである以上、きちんと利益を得なければなりません。その前提の中で、「とくし丸」らしくサービスの幅を広げていくこと、深めていくことに面白さを感じます。

例えば、私たちにとって一番大切なことは、「お客さま」と末永く信頼関係を保つことです。だからこそ、儲けを求め過ぎないことを大切にしています。無理に商品を買いすぎて、食べきることができずに捨ててしまう、ということはあってはなりません。あまりに多くの商品を購入しようとする場合、食べきれる量か確認し、時には売り止めするケースもあります。

このように家族や親戚のような関係性を築くことで、「とくし丸」への信頼に繋がり、長くこのビジネスを続けることができるのです。

一方で、難しさもあります。社会貢献性が高い事業を行っているので、時折、ボランティアと混同しがちになってしまうことがあるのです。分かりやすい例でいうと、安く商品を提供することを第一に考え、高価なものを取り扱うことに躊躇してしまうパートナーもいらっしゃいます。一見すると優しさのように見えますが、お客さまのニーズが必ずしも安いものだけにあるとは限りません。買い物の選択肢を広げることで、買い物の楽しさを実感できるものです。

―ビジネスに注力するだけでも、お客さまに寄り添うだけでも、社会課題の解決にはつながらないのですね

とくし丸だけではお客さまに買い物体験を届けることはできません。これまで近隣の人々の暮らしを支えてきた「地域スーパー」の役割も大きいビジネスモデルです。

時代の流れとともに郊外のスーパーマーケットの超大型化が進んでいます。その結果、暮らしを支えてきた地域スーパーの売上は下がり、撤退せざるを得ない。その結果、買い物を満足にすることができず「買い物難民」が生まれているという面があります。

そこにとくし丸があることで、地域スーパーから商品の提供を受けるため、売上に貢献できますし、お客さまにこれまで通りの買い物の場を提供することができます。販売パートナーも、個人事業主として地域に貢献し、たくさんの方から直接「ありがとう」と言ってもらえる仕事に就くことができます。

このように、「お客さま」「地域スーパー」「販売パートナー」、そして「とくし丸」の4者がすべてwin-win-win-winの関係で繋がることで初めて、「とくし丸」のビジネスが社会課題を解決するものとして成立するのです。

ミッションを解決した先をも見据えて

―社会課題を解決する業務を行う上で、杉山さんが大切にされている考え方はどのようなものでしょうか

ベストを尽くす、というあいまいな考えではなく、どうすればミッションを達成できるか、という明確なゴールを常に念頭に置きながら行動するようにしています。一生懸命やることはもちろん大切ですが、もっと具体的に、お客さまや地域スーパー、販売パートナーがどうなっていればそれぞれが幸せだと言えるのか、そのためにはどういう施策が必要なのか、逆算して考えることがミッションの達成には重要です。私自身、こうして逆算し、戦略的に事業を考えることに楽しさも感じています。

この考え方のもと、ミッションが達成できれば、その先には買い物だけに留まらない、生活の質の向上が実現できるような新たなサービスを手掛けることができるようになります。「買い物難民」という社会課題を解決した先を意識し行動することで、新たな課題の解決に貢献しつつ、自分のキャリアをステップアップさせることができると思っています。

―本日はありがとうございました。読者の中には社会貢献したいと考える方もいます。最後に、20代のうちに自分が解決したいと思える社会課題を見つけ、それに取り組むために、どんなアクションを起こせばいいのか教えてください

まずは、ベースとして課題を解決することにやりがいや面白さを感じることができるマインドを持っているかを冷静に判断する必要があります。このマインドを根幹に、例えば自分の場合は食に興味があったので、食に関わる企業がどんな課題を解決しているのか、情報収集を重ねた結果、とくし丸に出会いました。

この記事を読まれる方の多くは、転職や新たなキャリアの築き方にアンテナを張っている方々だと思います。同様に、世の中にはどんな課題があるのか、アンテナを張ってみてください。もし自分の興味のある課題を見つけたら、次はその課題に対して、各企業がどのようにアプローチしているのか調べてみてはいかがでしょうか。

こうして自分の興味のある課題を見つける、そしてその解決に向けて活動する方々についての知識を深めていくことが、社会課題を解決する第一歩なんだと思います。
 



​​​​株式会社 とくし丸
2012年1月創業、2016年5月には食品のサブスクリプションサービスを提供する「オイシックス・ラ・大地」の連結子会社に。名称には創業地の「徳島」と社会事業や公共の福祉に貢献する「篤志」の意味が込められ、「買い物難民」という社会課題の解決を目指す移動スーパー事業を展開。単なる移動販売に留まらず、地域の「見守り隊」としての役目を果たすことで、高齢者の孤立という社会課題にもアプローチするなど、ビジネスで社会課題に立ち向かっている。これらの取組みが評価され、GOOD DESIGN AWARD 2017 BEST100、第5回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞など、多くのアワードで受賞している。

とくし丸WEB https://www.tokushimaru.jp/

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 T.I.

1995年5月生まれ。
新卒で食料品小売会社に入社。しかし小説家を目指して執筆活動を行っていた経験から、言葉でもっと人を惹きつける仕事がしたくなり一念発起。クリエイターとして就職情報会社に転職。以降、様々な業界の採用サイトやパンフレットの制作に携わる。20代の働き方研究所では記事執筆を担当。趣味はコーヒー豆の焙煎とラテアート。

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