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2024.03.27INTERVIEW

ヒロインメイクを手掛ける化粧品メーカー『伊勢半』の広報担当インタビュー。「メイクの知識は人並みでした」

20代の働き方研究所 研究員 A.F
株式会社伊勢半
コミュニケーション本部 広報宣伝部 広報課
日下部 かおり(くさかべ かおり)様


株式会社伊勢半は、2025 年に創業200 年を迎える総合化粧品メーカーです。読者の皆さんも「ヒロインメイク」「キス」「リップアーマー」などを店頭で見かけたことがあるのではないでしょうか。今回お話を伺ったのは、伝統を大事にするとともにバズる商品を次々と生み出す株式会社伊勢半で、広報職として活躍する日下部さんです。日下部さんは、大手旅行会社JTBグループで約8年間、多岐にわたる業務に携わったのち広報担当へ。広報の仕事にやりがいを感じ、より専門性を高めるために転職を決意したといいます。現在は伊勢半で、日下部さん発案の社外向けニュースレターを発行したり、インスタグラムのライブ配信を利用して商品の魅力を紹介されたりしているそうです。広報職のやりがいとは何か、コロナ禍だった20代後半に、他業界への転職を決意された理由は何だったのか、これからどのようなキャリアを積んでいきたいのか、お話を伺いました。

ポジティブな気持ちで向き合えた「広報職」という仕事の魅力

―新卒でJTBグループに入社し、社会人としてのキャリアが始まったそうですね

はい。JTBグループには約8年間在籍し、様々な仕事を経験させていただきました。私自身、家族旅行の計画や下調べを率先して行うなど、学生時代から旅行好きで憧れの業界でした。また、大学も外国語学部に在籍していたこともあり、国内外を問わず旅をしていたことも志望動機の一つになりました。

―JTBグループでも広報職を経験されたと聞いています

そうですね。キャリアを積んでいく中で広報のポジションへ異動となりました。偶然のこととはいえ、人前で話をしたり、文章を書いたりすることが好きで、かつ自分の思い入れのある「旅行」に関する発信ができることがとても楽しかったです。

たしかに、旅行商品を実際に作るといった業務からは離れたものの、自社の取り扱う全ての商品にかかわることができる立場でもありましたので、そうした点も仕事をするうえでのやりがいに感じる部分でした。

―広報職ならではのやりがいがあったのですね

広報は自分の言葉で多くの人に魅力を伝える仕事です。多くの仕事を経験させていただきましたが、自分にとっては一番適性のある仕事だと感じました。ポジティブな感情を持ちながら仕事に向き合えたことを覚えています。

ずっと抱えていたモヤモヤをコロナ禍が後押しした
 

―そうしたやりがいや喜びを感じる仕事に従事しながら転職を志されたのはなぜでしょう

広報の仕事を担当して1年ほどたったころ、新型コロナウイルスの感染拡大によって行動制限が課されるようになりました。旅行は不要不急なものとみなされ、PR活動も自粛しなければなりませんでした。実質的に仕事ができない環境に置かれる中、やはり広報の仕事を継続して専門性を磨きキャリアを積みたいと考えるようになったんです。

―コロナ禍では先行き不透明な状況から求人を一時的に止める企業も多かったと思います。転職も大変だったのではないでしょうか

転職が簡単なことではないと覚悟していましたが、コロナ禍でいろいろなことに制約がかる困難な状況に置かれていましたから、失うものは何もない!という気持ちで転職に踏み出しました。

また、実は転職活動や自分自身のキャリアについては、20代後半ごろからぼんやりと考え始めるようになっていました。

―20代後半から漠然とキャリアに対する不安があったということでしょうか

やはり、20代後半になると新卒で入社した同期もライフステージが変化していったり、転職をして自分らしいキャリアを描いたりする人も出始めていました。JTBグループで充実した環境にあったとはいえ、果たして新卒で入社した会社に居続けることが正解なのか、これからも成長することができるのか、そんなことを思うようになっていたんです。

ただ、まったく新しい環境で本当に活躍できるのかという不安も持ち合わせていました。人間関係も築きなおさなければいけません。転職にはなかなか踏み切れないなか、コロナによって働く環境が大きく変わり、この機会に踏み出そうと考えたのです。

「革新的老舗」を掲げる伊勢半との出会い

―日下部さんは、もともとメイクにそこまで興味がなかったと聞いています

確かに化粧品の知識は人並みといった感じでした。シーズンごとの新商品を積極的にチェックするというよりは、必要なときにドラッグストアに行って気になるものを買うといった具合でした。必要最低限は持っておこう、というくらいでしたね。

また、転職当時は社会変動に影響を受けにくい業界というざっくりした希望で探していましたので、初めから化粧品業界を強く志望していたわけではありませんでした。ただ、伊勢半グループの求人と出会った時に、伝統を大切にしながらも革新的である社風や、求める人財像に共感し興味を抱きました。さらに、人並みのメイク知識だった私でも知っていて使用したことのある商品の会社ということで、さらに親近感を覚えました。

―伊勢半グループへの応募動機や入社の決め手は何だったのでしょうか

様々な企業の広報職の採用要件を見ていると、まだまだ自分は力不足かもしれないと思い、応募に躊躇することがありました。そんな中、伊勢半グループは求める人物像に「困難な状況や時代の変化に対して、前向きに、そして、柔軟に対応できる人」と書かれており、まさに自分のことのように思えたのです。

また、伊勢半グループは自分たちらしさを表す「パーソナリティ」の一つに『革新的老舗』を掲げています。型にはまらない発想を大切にしており、そんな会社の広報であれば私のように様々な仕事を経験してきた人材を評価してくれるのではないかと思ったのです。

実際に、新型コロナウイルスが流行した初年度こそ売上はやや下降したものの、その後は状況に合わせて様々な商品を生み出し、柔軟な広告戦略を取ったことで業績は右肩上がりで推移しています。伝統は重んじつつ、革新的なチャレンジも後押しする、そんな文化がある会社です。

―ちなみに、入社されてからメイクへの関心度に変化はありましたか

それはだいぶ変わりましたね。新しい化粧品を試せる機会もありますし、広報をしていると業界のトレンドや他社の商品についても詳しくなります。だからといって、社員みんながコスメオタクというわけではないのも面白いところです。

メイクそのものというよりは、化粧品の開発やパッケージデザインが好きという人もいますし、自社ブランドの商品しか使えないといったこともなく、一人の消費者として他社ブランドの商品を試すこともあります。

「進取果敢」。とにかく果敢にチャレンジしよう

―伊勢半グループでの広報の仕事はどんな内容なのでしょうか

いまは企業広報を担当しているので、伊勢半グループの取り組みを社内外に広く周知していくことが主な仕事になります。具体的にはこうしたメディアの取材対応のほか、伊勢半グループの新商品や会社の取り組みの定期的な発信、そのほかヒット商品の誕生秘話などを私が担当社員に取材してホームページに掲載する、といったようなことをしています。

例に挙げた社員インタビューといった、人にフォーカスしたPR活動は、私が入社してから取り組み始めたことで、採用活動でのイメージアップにもつなげることができるのではないかと考えています。まだまだ始めたばかりの活動ですから、これからもっと拡充していきたいですね。

―インスタライブも配信されていましたね

そうですね。同僚の発案でスタートしました。普段、業界紙などのメディアの方に向けて情報発信することが多いのですが、ユーザーの方にダイレクトに話すことはなかったので、自分にとっても新しい挑戦だと思っています。

―他にはどんなところに前職との違いがありますか

基本的な業務に大きな差はありませんが、前職と比較すると伊勢半グループはより幅広い業務にチャレンジできています。また、200年余りの歴史を誇る会社が、例えば「ヒロインメイク」といった注目を集める商品を売り出すことで、数多くの取材打診をいただくこともあります。このような経験はなかなか積めないものだと思っています。



―現在は2025年の創業200年のプロジェクトも計画中と聞いています

プロジェクトの詳細については準備中ということもあってまだ広くリリースはしていませんが、200年という節目ですのできっと多くの方にインパクトを感じていただける、やりがいある仕事になると想像しています。

創業からの歴史の中でどのような歩みをしてきたのか、またこの先、どのような方向に向かって進んでいくのか、伝えていきたいですね。その一環として、社史の編纂作業のサポートにも取り組んでいます。社史の編纂作業が最後に行われたのは今から30年ほど前のことですので、それ以降の伊勢半グループの取り組みを落とし込んでいかなければいけません。

広報の立場からすると、社史を含め伊勢半グループについてより深く知っていただける絶好の機会であることは間違いありませんので、周年関連の広報活動は特に力を入れて取り組んでいきたいと思います。

―これから先、どのようにキャリアを描いていきたいと考えているのでしょうか

伊勢半グループでは「進取果敢」という考え方を大事にしています。前例のない難しいことに自ら進んで取り組む果敢な行動力といった意味です。近年の年度スローガンではこの考えをキーワードにしていて、社員にも浸透しています。

先ほどの周年プロジェクトも然りですが、広報としての専門スキルを磨くにあたって、「前例がないから止めておこう」などとは考えず、とにかく果敢にチャレンジすることを念頭にキャリアを描いていきたいと思っています。

どんな会社や仕事でも、苦手に感じる業務を担当することもあると思います。それから逃げることや、拒否することは簡単なことではありますが、意外とそうした業務からは得難い経験や、自分の肥やしとできるような知見が得られると思っています。

私の場合は文系学科の出身ですので、数字管理やIT分野に関連する業務に苦手意識がありました。前職では旅先でのトラブル対応や、航空機の急な欠航などによる払い戻し手続きをはじめ、販売実績管理をすることもあったのですが、実は非常に細かい数字管理が求められるものでした。上司の報告の際にも数字が合わず、とても苦労したものです。

それでも、その経験があったからこそ注意すべきポイントなどもわかっているので、現在では予算管理などの業務にも円滑に対応できるようになっているんじゃないかと思います。

―思えば日下部さんが転職されたときの求人にも、求める人材の欄に同様なことが書いてありましたね

他の会社では社史の編纂業務やメディア対応などはその会社の文化や姿勢をよく熟知しているプロパーの社員に任せることも多いと聞きます。そこをあえて外から転職してきた社員に任せることは、伊勢半グループとしても前例のないことだったそうです。それでも社外で様々な経験を積んでいて、会社の考えに共感している人であれば、まさに前例のないチャレンジができるのではないかと考えてもらったようです。


 

「こうありたい」キャリアに向けて、心の声を聞くこと

―ここまでお話いただきありがとうございました。最後に読者へのメッセージをお願いします

同じ広報とはいえ、転職して別業界に入った経験からすると、まずは自分の「直観」を大事にしてほしいと考えています。年収を上げたい、やりがいある仕事に挑戦したい、人間関係が良好な職場にいきたいなど、叶えたいことはたくさんあると思いますが、その中でもどれが一番優先されるものなのか心の声をよく聞いてみてほしいと思っています。

周囲からの見られ方や、様々な情報に触れる中で「こうありたい」ではなく「こうあるべき」と、考え方に固執してしまうことがあると思います。そうなると、きっと自分の心が苦しくなってしまうんじゃないかと思うんです。だから直観を大事にしてほしいと思います。

これからの長いキャリアを、ありたい自分か、あるべき自分か、しっかりと考えて選択できたらより実りあるものになるのではないでしょうか。

株式会社伊勢半
1825年(文政8年)に江戸・日本橋に紅屋「伊勢屋半右衛門(通称:伊勢半)」として創業。現在は総合化粧品メーカーとして「ヒロインメイク」「ヘビーローテーション」「キスミー フェルム」「キス」など、セルフメイク化粧品の製造販売を行う。その一方で、現存する最後の紅屋として祖業である紅づくりを江戸時代から変わらぬ製法で守り続ける唯一の企業。
 

この記事を書いた人

20代の働き方研究所 研究員 A.F

新卒・未経験からSEとしてキャリアをスタート。4年ほど働いたところで、プログラムを動かすコードより人間の心を動かす文章の方が書きたくなり、転職。2023年2月に株式会社学情に入社し、現在はオウンドメディア「人事の図書館」にてSEO対策記事の執筆・校正を担当、人事採用関連の記事を170本以上公開。自社メディア「20代の働き方研究所」でインタビュー記事も担当。

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